宝塚歌劇団 阪急阪神HDの経営・イメージに打撃 沿線の価値低下も

» 2023年11月15日 11時39分 公開
[産経新聞]
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 宝塚歌劇団の劇団員の女性が死亡した今回の問題は、その運営を主力事業の一つとする阪急阪神ホールディングス(HD)の経営にも影響を及ぼしかねない。公演収入などの落ち込みなどが懸念される上、歌劇団は阪急阪神HDグループのイメージとしても大きな存在感があるためだ。問題の抜本的な解決へ適切に対処できるかは企業統治(ガバナンス)の面でも重要で、阪急阪神HDの対応が注目される。

 「発表済みの公演中止については、業績予想に含まれている。今後については、(事件の原因の)調査結果による。それが収支にどのような影響を与えるかは、現時点では分からない」

会見の最後に謝罪する木場健之理事長(左から2人目 =14日午後、兵庫県宝塚市の宝塚ホテル

 阪急阪神HDの大塚順一執行役員は10月末の決算会見で、こう述べた。

 阪急阪神HDの令和5年9月中間連結決算で、宝塚歌劇団を中心としたステージ事業の売上高は、前年同期比で13億円増の178億円となった。新型コロナウイルス禍の収束が進み、着実な回復を見せた。

 ただ、9月末に劇団員が死亡しているのが見つかった後、歌劇団は一部公演を中止しており、通期では影響が避けられない。公演収入やグッズの販売などの落ち込みが懸念される。同社のエンタテインメント分野は、プロ野球の阪神タイガースと、歌劇団の運営が事業の主力だが、阪神が日本シリーズを制覇した状況とは大きく明暗が分かれた格好だ。

 阪急阪神HDグループ全体のイメージに影響を及ぼす可能性も否定できない。阪急電鉄の駅には軒並み歌劇団のポスターが貼られ、阪急阪神HDは宝塚市のまちづくりにも密接にかかわっている。

 「歌劇団というコンテンツのブランドは、阪急阪神HDグループのイメージと密接に絡んでいる。対応を誤れば、宝塚周辺の沿線価値の低下にもつながりかねない」(関西経済に詳しい専門家)のが実情だからだ。

そのため、歌劇団が今後どのような改革を進めるかは、グループ全体にとり重要な課題となる。

 前出の専門家は「第三者の目をしっかり入れて、可能な限り過去に遡(さかのぼ)って調査を行い、改革の方針が打ち出せるかが問われている。それができなければ、ファンは安心して公演を見ることはできず、グループ全体のガバナンスの能力も疑問視されかねない」と警鐘を鳴らす。(黒川信雄)

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