リテール大革命

忍び寄る宅配クライシス 「ラストワンマイル」担い手の倒産が過去最悪

» 2023年11月20日 05時45分 公開

 個人宅への配送など、物流の最川下である「ラストワンマイル」を担う軽貨物運送で倒産が急増している。帝国データバンクによると、2023年1〜10月に発生した倒産は35件で、過去最多を更新中であることが分かった。10月末までの負債1000万円以上・法的整理による倒産を集計した。

photo 「宅配クライシス」が現実に?(提供:写真AC)
photo 軽貨物運送の倒産件数推移(出所:プレスリリース、以下同)

 軽貨物運送は、コロナ禍によるEC需要の高まりを追い風に参入が相次いだ。個人宅への配送を請け負うラストワンマイル物流の担い手として、重要度が高まる領域でもある。

 一方で、人件費や燃料価格の高騰によるコスト負担が増加するなど、逆風にも直面している。運賃単価の引き上げ交渉が厳しいことや多重下請構造を背景に、コスト増に見合う十分な運賃収入が得られない事業者も多い。22年度の最終損益が赤字と回答した企業は23.9%で、減益を含めた「業績悪化」は56.9%にのぼった。

photo 軽貨物運送の業績推移

 帝国データバンクは「フリーランスの委託ドライバーや小規模零細企業など、件数に表れない廃業を含めれば、より多くの軽貨物運送業者が淘汰されている可能性がある」と指摘する。重くなる負担に耐え切れず、事業継続を断念する事業者が今後も増加する可能性は高い。質の高い宅配網を維持できなくなる「宅配クライシス」は、すぐそこに忍び寄っている。

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