オペレーションでは、コロワイドのノウハウを生かした施策を展開。コロワイドは現在、傘下に牛角やしゃぶしゃぶ温野菜、かっぱ寿司などさまざまな業態を展開しており、グループ全体で仕入・物流を共通化できている。そのため、コロワイドによる買収以降、原価率が低下したようだ。『赤字の大戸屋「おかわり自由」が試金石に。コスト削減の成果も』(bizSPA!フレッシュ、22年6月28日)によると、20年3月期から22年3月期にかけて、43.8%→42.3%と、原価率が1.5ポイント改善しているという。
大戸屋が従来ウリとしてきた店内調理を残しつつ、1次加工ではセントラルキッチン方式を導入した。狙いは提供時間の短縮にあると見られる。現行の中期経営計画では、全体的な提供時間の短縮と、特に一部の料理で12分以上もかかっていた調理時間を改善する目標を掲げている。
提供時間の短縮は、人件費の削減をもたらす。大戸屋はコロワイドの傘下に入ったことで、仕入れや物流・人件費の面で効率化を果たしたわけである。買収後、特に大戸屋の味が落ちたという意見も目立たず、品質の維持と効率化を両立できているようだ。
22年3月期・23年3月期の売上高はそれぞれ約188億円・238億円と、コロナ禍からの回復は道半ばだ。24年3月期の売上高は、過去最高となる約266億円を目標としており、期中の成績を見る限り現時点では達成できそうだ。値上げや積極的な広告宣伝の影響もあるが、やはりメニュー改定の影響が大きいだろう。現に既存店の客数は前年比で増え続けている。
商業施設におけるフードコート店の展開や「卸」としての冷食販売、総菜小売店「大戸屋おかず処」の展開など、新たな施策も模索している。大阪王将を運営するイートアンドホールディングスが冷食事業で好調なように、大戸屋の冷食事業も高い認知度を武器に成功する可能性は高い。回復した飲食事業に冷食・総菜事業の売り上げが加われば、事業規模はさらに拡大することになる。かっぱ寿司の再生では苦戦するコロワイドだが、大戸屋は同社にとって事業再生のモデルケースとなるかもしれない。
【お詫びと訂正:11月25日午後2時30分、原価率の記載を修正しました。】
山口伸
化学メーカーの研究開発職/ライター。本業は理系だが趣味で経済関係の本や決算書を読み漁り、副業でお金関連のライターをしている。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー X:@shin_yamaguchi_
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング