高速バスの「風雲児」が起死回生策 進撃続く「赤字日本一」3セク鉄道(2/3 ページ)

» 2023年11月30日 10時02分 公開
[産経新聞]
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「手数で勝負」

 沿線人口の減少などを背景に、慢性的な赤字経営が続いていた第三セクターの北近畿タンゴ鉄道が経営再建策として鉄道施設や車両の所有と運行を切り離す「上下分離方式」を導入。公募で選ばれたウィラートレインズ(京都府宮津市)が運行を担う形で平成27年4月に丹鉄が誕生した。

 北近畿タンゴ鉄道は第三セクター鉄道のなかでも日本一の赤字路線として知られ、ピーク時から約4割も乗客が減少している中での厳しい船出。しかも、運行を担う同社の親会社「ウィラー」は高速バス事業で急成長を遂げたものの、鉄道事業のノウハウはない。現在社長を務める飯島徹社長(60)も就任前は系列会社でバス事業を手掛けており、鉄道に携わるのは初めてという。

「手数で勝負」と話すウィラートレインズの飯島徹社長=京都府京丹後市(橋本亮撮影)

 「バスよりも自由にいろいろなことができる。手数で勝負していきたい」と飯島社長。その言葉通り、進撃号などを含めて面白い企画やアイデアを次々と実行に移すと、メディアに取りあげられることが増え、丹鉄発足前の26年に26件だったメディアへの露出件数は30年には千倍近い2414件にまで急増。新型コロナウイルス禍にあっても2千件近くを維持し、令和4年は2628件に達した。

 丹鉄の運行初年度となった平成27年度は乗客数は前年度をわずかに上回ったものの、それ以降は雪害や台風、豪雨という自然災害に見舞われ、令和2年度からはコロナ禍が追い打ちをかけた。それでも、4年度はさまざまな施策が奏功し、乗客数、運輸収入ともに前年度を上回り、運輸収入は約1.5倍に。地元の食材が楽しめるレストラン列車「丹後くろまつ号」も乗車率が8〜9割にまで回復し、「赤字幅は圧縮できている」(同担当者)。

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