旧国鉄、JR東日本出身で青山学院大大学院の福井義高教授(会計学)は9月、「鉄道ほとんど不要論」という本を出版した。赤字ローカル線に関する主張は、ずばり「地域交通の主役は鉄道やバスではなく自家用車でよい」というものだ。
福井さんは「そもそも、地域での交通は『公共』でなければならないのか」と問題提起。「『公共』という言葉が使われると、なかなか面と向かって反対しにくいが、政策立案は合理的根拠に基づかなければならない」と指摘する。
その上で、わが国の陸上輸送量について輸送機関ごとのシェアを推計。新型コロナの影響が少なかった令和元(2019)年度の全輸送人員949億人のうち、鉄道は27%、バスは5%、タクシーは1%。残りの67%を占めたのは自家用車だった。
さらに、とりわけ過疎化が進む四国地方でのシェアは、27億人のうち鉄道は3%に過ぎず、バスとタクシー各1%、実に全体の94%は自家用車だったという。
福井さんは「データでみるかぎり、四国のような日本の地方部では鉄道やバスといった乗り合い交通は、ほぼその使命を終えている。また、自家用車はいつでもどこでも思い通りに移動できる上、あまり指摘されないがプライバシーが尊重される点でも、乗り合い交通とは比べものにならないほど優れている」と説明。
「今後の地域交通政策は、高校生のスクールバスと、自家用車の利便性向上を中心に考えていくほかない」と提言する。
具体的には、今後JR各社が赤字ローカル線の廃止を提起する際、社内などに基金を作り、スクールバスの運転手確保や定期代の補助、自家用車のためのガソリンスタンド維持などへ拠出することが考えられるという。
もちろん、通学以外にも一定程度の需要があれば、バス転換も選択肢ではある。その場合、スクールバスとの兼用で路線バスを走らせるアイデアもある。
「私の目安では、廃止する線路1キロ当たり1億円。JRなら『出します』と言うだろう。豪雨など災害をきっかけに廃止を切り出すのは、受け入れやすいかもしれないが、本来は冷静な収支計算に基づいて議論すべきことだと思う」
米坂線の不通区間では現在、並行する国道113号を「高速道路化」する「新潟山形南部連絡道路」の建設が進んでいる。
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