赤字ローカル線は「バス転換」より「自家用車転換」 JR出身の専門家が提言(1/3 ページ)

» 2023年12月18日 10時26分 公開
[産経新聞]
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 赤字ローカル線の存廃論議が表面化している。JR東日本などが昨年、利用者の少ない地方路線の収支を初めて公表。今年10月には国が調整役となり、鉄道会社と地元自治体の議論を後押しする協議会制度が始まった。ローカル線の廃止といえば「バス転換」が主流だが、バスよりも自家用車に転換すべきだと提言するJR出身の研究者がいる。その先には自動運転による課題解決も視野に入る。

存廃論議が表面化

 赤さびた鉄路に雑草が生い茂っていた。10月上旬、山形県飯豊(いいで)町のJR米坂(よねさか)線。昨年8月の豪雨で鉄橋が崩落、全線の4分の3に当たる約68キロで不通が続き、代行バスが運行されている。

photo 一部区間で不通が続くJR米坂線=10月、山形県飯豊町

 同社は復旧に約86億円と約5年の工期がかかると試算、今年9月から関係自治体が参加する「復旧検討会議」で議論を始めた。同社は「復旧も廃線も決めていない」としているが、沿線の小国町では今月8日、早期復旧を目指す期成同盟会が発足した。

 ローカル線の赤字をめぐっては、JR東はこれまで、新幹線や首都圏の路線、不動産などからの収益でカバーしてきた。だが、人口減少や自家用車の普及を背景に旅客収入は伸び悩み、新型コロナウイルス感染症でも打撃を受けた。

 昨年7月、同社は利用者の少ない地方路線の収支を初めて公表。米坂線を含む、1キロ当たりの1日平均乗客数が2千人未満の35路線66区間は令和元(2019)年度、収入から費用を差し引いた収支が全て赤字だった。

 同社は昨年8月の豪雨で被災した青森県の津軽線について、一部を廃線にした上でバスや乗り合いタクシーへ転換する議論を地元自治体と開始。利用低迷が続く千葉県の久留里線の一部でも今年5月、存廃の協議が始まった。

 10月には、国が鉄道会社や自治体の要請に基づき、ローカル線の存廃を議論する「再構築協議会」を設置できる制度が始まった。現在、JR西日本が岡山、広島両県の芸備(げいび)線の一部で設置を要請している。

 平成23年の豪雨で不通となった福島、新潟両県の只見線の場合、JRが列車を運行し、自治体が線路などの維持管理を担う「上下分離方式」で昨年10月、全面復旧したが、廃線となる場合は、どんな選択肢があるのか。

 主な選択肢はバスや乗り合いタクシーへの転換だ。平成23年の東日本大震災で被災した宮城、岩手両県の気仙沼、大船渡両線の一部は、バスが専用道などを走る「バス高速輸送システム(BRT)」へ移行した。

 ただ、バスやタクシーの運転手も人手不足が深刻化しており、今後は簡単ではない。

 実は、もう一つ選択肢があるという。

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