どうなる「楽天経済圏」 モバイルの巨額赤字だけでない、深刻な懐事情(4/4 ページ)

» 2024年01月19日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]
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ネットスーパーも赤字 光は見えるのか

 今後の資金繰りに向け、次は楽天カード株の売却に動くのではないかと決算会見でも質問がぶつけられていました。しかし、親子上場は少数株主の利益を損なう懸念があるとの指摘も多いことから市場の見方は批判的で、むしろ一般的には解消の方向に向かっています。さらに、集客の軸となるポイントサービスとも関連性の高いカード会社まで経営の舵取りの自由を失うことは、楽天経済圏構想の崩壊にも繋がりかねません。ここは慎重にならざるを得ないのではないでしょうか。

 直近のニュースでは、モバイル事業の黒字化遅れによる繰り延べ税金資産700億円の取り崩しと、ネットスーパー事業関連で約160億円の損失計上が発表。2月に予定されている23年度通期決算の発表に向けて暗い材料ばかりが続出しています。とにもかくにもモバイル事業の黒字化こそが、今の資金繰り地獄から抜け出す唯一の道であるわけです。

 となるとなおさら、契約者の激増に向けた秘密兵器製造に期待を託している業務提携先であるオープンAI社のいざこざは、あまりに痛過ぎる印象です。この一件を耳にして三木谷社長が流したのは冷や汗ではなく、もはや脂汗だったかもしれません。とにかくモバイル事業に関しては八方塞がりな感が否めない三木谷楽天ですが、2月の決算発表で社長がどのような展望を語るのか、注目して待ちたいと思います。

著者プロフィール・大関暁夫(おおぜきあけお)

株式会社スタジオ02 代表取締役

横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時はいわゆるMOF担として、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。銀行では企画、営業企画部門を歴任し、06年支店長職をひと区切りとして円満退社した。その後は上場ベンチャー企業役員などとして活躍。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業のアドバイザリーをする傍ら、出身の有名超進学校人脈や銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆者やコメンテーターを務めている。


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