今回のケースでは、PCのセキュリティ対策ソフトが感染を検知でき、その後は直ちに所属組織に通知して日本の本部システムなどへのアクセスを遮断したため、被害は広がらなかったようだ。
さらに言うと、今回はマルウェアを検知できたからよかったものの、世の中には、そうしたソフトでは検知できないマルウェアなどもかなり多く存在する。相手から見れば、ターゲットが大物になればなるほど、検知されにくい巧妙なマルウェアなどを埋め込んでくる可能性もある。
もう一度言うが、こうしたサイバー脅威は日本人にも決して人ごとではない。
冒頭の外国人記者や筆者が重いバックパックを出張時に持ち歩いている理由は、まさにこうしたリスクを恐れているからだった。ビジネスパーソンは面倒でも、特に出張中はPCなどを手元に携行すべきだろう。「部屋に鍵をかけた」「セーフティボックスに入れた」では、自分のPCはもう守れない。さもないと、マルウェア感染で自分の属する組織や会社に、甚大な被害をもたらしかねないのだ。
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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