中国が米テスラに“撤退圧力” 企業が再考すべき「チャイナリスク」とは世界を読み解くニュース・サロン(1/5 ページ)

» 2023年09月08日 06時30分 公開
[山田敏弘ITmedia]

 中国の「カントリーリスク」はとどまるところを知らない。直近では、2011年の東日本大震災によって起きた福島第一原子力発電所の事故を受けて、これまで蓄積されてきた冷却水(いわゆる処理水)の海洋放出が大変な物議になっている。8月24日から開始したALPS処理水の放出を受けて、中国政府は直ちに日本の水産物の輸入を全面禁止にした。また日本企業のボイコットもSNSで広がっており、これからさらに広がる可能性も指摘されている。

photo 福島第一原発(出典:資源エネルギー庁公式Webサイト)

 加えて、中国から大量の“電凸”が発生し、日本各地にその被害は及んだ。報道によれば、東京電力には6000件以上、東京都庁には3万件以上の迷惑電話がそれぞれ発生したという。もはやサイバー攻撃でいうなら「DDoS攻撃」のようなもので、威力業務妨害罪になる可能性がある。発信番号などを突き止めて、今後の入国者と照らし合わせて摘発する、といったところまで毅然と対応すれば日本政府も大したものだが、もちろんそんなことはできないだろう。

photo 東京都庁に大量の迷惑電話(出典:東京都庁公式Webサイト)

 この騒動の前には、7月1日に中国で反スパイ法の改正法が施行されており、これまで以上に恣意的に中国当局が外国人を拘束できてしまうことになった。中国に進出している日本の企業関係者からは「中国には怖くてもう行けない」という悲鳴に近い声も聞こえている。

 中国と深く関わること自体がリスクになりつつある昨今だが、これは何も日本だけの問題ではない。実は、これまで中国進出の成功例と見られていた、ある米大手企業も難しい現実に直面している。その企業とは電気自動車大手のテスラだ。

 世界一の富豪で稀代のビジネスマンと評されるイーロン・マスクが率いるテスラも「中国リスク」を抱えているのである。そこで、テスラが置かれている状況を考察しつつ、日本企業がそこから何が学べるのか探ってみたい。

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