中国製BEVは今後どうなるか 避けられない現実池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/6 ページ)

» 2023年08月21日 08時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

 中国製のBEVと聞いて、どういうイメージを持つだろうか。細かくはいろいろな意見があるのだろうが、大筋2種類だろう。1つは、目覚ましい進歩によって、圧倒的なコストパフォーマンスを達成した、次世代自動車の覇者と見る人。もう1つは、まだまだ未熟で出来が悪いクルマだと考える人だ。

グローバルでも競争力を持つ中国製BEVも

 上に挙げた意見に対し、筆者はどちらもあまり的を射たものだと思っていない。既に中国製BEVの一部は製品としてそうそうバカにできるものではなくなっている。それは中国共産党の政策の元で行われてきた、国際ルール上違法性の高い技術転移の成果であり、そのビジネスの背景はともかく、製品単体で見れば既にグローバルな競争力を持つものもでてきている。

BYD ATTO3は中国の比亜迪社(BYD)が販売するBEV。サイズはCセグメントで、電池容量58.56kWh、WLTC航続距離470キロでありながら440万円からという価格が話題を呼んだ

 ただし、それは実質的にはほぼBYD1社の話で、一時期話題になった「宏光MINI EV」のようなローエンドカーとは区別すべきだ。つまり、中国製のBEVとひとくくりにされているクルマの中には、ミニマムトランスポーテーションとしての自動車未満のクルマとグローバルに見て最先端を狙う商品の2種類が混在しており、そのせいで話がかみ合わない。

「宏光MINI EV」は中国の上汽通用五菱汽車が販売するBEV。極端なミニマリズムで、デビュー時には邦貨換算47万円(現在では約65万円)で話題を呼んだ。登場した2020年以来中国国内BEVの販売台数でトップを席巻していたが、ここへきて40%以上の販売台数急落に見舞われている

 圧倒的に安いクルマは短期的には話題になるが、こういうクルマが、市場に対して長期的にインパクトを与えたことは歴史上ない。少なくとも過去の例に照らす限りにおいては、あくまでも一過性のブームである。

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