クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

なぜヘッドライトがまぶしく感じるクルマが増えているのか高根英幸 「クルマのミライ」(1/5 ページ)

» 2023年05月04日 08時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

 夜間、クルマを走らせていて、対向車や後続車のヘッドライトがまぶしいと感じるドライバーはかなり多いようだ。運転中にまぶしい光を感じたら、そこから視線を逸らしたほうが視界を奪われずに済むのだが、安全上前方だけを凝視しているわけにもいかず、左右にも視線を配る習慣ができている人も多く、どうしてもまぶしさから逃れにくいこともある。

夜間、クルマを運転していて、対向車や後続車のライトをまぶしいと感じる機会が増えた。それはクルマのヘッドライトの特性の変化とドライバーのモラル低下、高齢化など複合的な原因がある

 このまぶしさには、大きく分けて3つの原因がある。1つめはヘッドライト自体が明るくなっていること。これはHIDやLEDヘッドランプの普及が大きく影響している。

 昔のクルマのヘッドライトはシールドビームと呼ばれる、ヘッドライトレンズが電球と一体になっていて、フィラメントが溶断されてしまうとレンズごと交換しなければならなかった。そこからバルブが内部で独立した構造となり、ハロゲンガスが封入されたことでフィラメントの蒸発が還元されて、明るくなるとともに長寿命化が図られた(ちなみにシールドビームでもハロゲンガス入りは存在した)。

 80年代からしばらくは、ハロゲンバルブの時代が続いた。日産がプロジェクターヘッドランプを採用したのも、大きなトピックだった。ドイツのBMWがいち早く採用した投射式のランプ構造をさらに発展させて、明るくコンパクトなランプユニットを実現したのだ。

 このあたりからヘッドライトは配光特性を変化させていく。それまでは細かいレンズによりある程度光を集めながらも配光する、穏やかな配光となっていた。そのため周辺にも光は散るがまぶしさを感じるほどではなく、周辺も薄暗くはあるがぼんやりと見えることで視界を広く照らしていた。

昔のクルマはシールドビームやハロゲンバルブで色温度が低く、光量が低く配光も穏やかだったのでハイビームでなければ対向車のドライバーにまぶしさを感じさせることはなかった

 それがプロジェクターランプや、反射鏡に配光機能を盛り込んだマルチリフレクタータイプのランプとなったことで配光特性が明確になり、ヘッドライトで照らされる境界がクッキリとされ、より明るさを感じさせるライトへと進化していった。

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