トヨタが“あえて”「全方位戦略」を採る理由 「EV全面シフト」の欧米と一線(1/5 ページ)

» 2023年05月14日 07時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

 トヨタ自動車(以下トヨタ)が4月1日、新体制発表会を開催しました。トップの座を豊田章男会長から佐藤恒治社長へのバトンタッチを発表して以降、新体制として初めて迎えた会見では、佐藤社長自身が「2026年までに新たに10モデルのBEV(バッテリー式EV)を投入し、全世界で年間150万台 のBEV販売を販売する」と、BEV強化を高らかに宣言しています。

photo 佐藤恒治社長(出典:トヨタイムズ)

 その一方で、一貫して豊田会長が社長時代に掲げたBEVやハイブリッド車(HEV)など電動車(EV)全体の開発・販売を強化する「全方位戦略」を踏襲する考えも強調しています。経済面での世界の二大勢力かつ二大マーケットである米国・中国が、脱CO2に向け電動化促進の方針を強化している中で、トヨタだけがことさら全方位戦略を強調していることにいかなる意味があるのか。その真意を探ります。

photo 豊田会長が社長時代から進めていた全方位戦略(出典:同社公式Webサイト)

「これからの自動車=BEV」の欧米

 最初にCO2削減に絡むEVシフトを巡る直近の動きを確認します。4月に札幌市で開催されたG7環境相会合で、欧米各国からはEV化促進に向けた具体的目標設定を望む姿勢が見られました。

 米国は今後10年で小型車の5割を、走行時にCO2を排出しないBEVや「燃料電池車」(FCEV)、「プラグインハイブリッド車」(PHEV)など「ゼロエミッション車」(ZEV)にする案を提示。英国は35年までに主要市場での販売のすべてをZEVにする目標を要望しました。

 議長国を務めた日本の強い要望により、共同宣言は2035年までに自動車から出るCO2を2000年比で50%以下にするとの内容に留まったものの、日本を除く各国の認識が「これからの自動車=BEV」の認識で加速度的に進んでいることを強く感じさせられた国際会議となったのです。

photo G7環境相会合(出典:環境省公式Webサイト)

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