すでに述べた通り、サプライヤーを中国企業にする約束をしていたことで、中国企業が手を合わせればテスラに近いようなハイテク電気自動車の部品などを生み出せる。
事実、そうしたサプライヤー企業は現在では中国の自動車メーカーともビジネスをしており、テスラから学んだ技術が中国メーカーに渡り、実際に最近では中国メーカーがテスラに負けるとも劣らないような電気自動車を生み出している。皮肉なことに、20年に電気自動車の中国国内シェアが2位だったテスラは、22年には3位に落ちている。
それでもまだテスラは人気だが、一方で「用なし」と見ている関係者も出始めているらしい。そして実際に、テスラへの締め出しなども起き始めているのだ。最近、中国各地で、テスラが厄介者、いや、邪魔者扱いされ始めているというのである。
最初の兆候は21年のこと。まず人民解放軍が、テスラの自動車が軍事関連の情報を収集しているとして、利用禁止措置にした。
さらに同年、上海国際モーターショーで、テスラの展示の上に乗って大騒ぎをしてテスラに対して不満を述べる女性が登場。その様子は見事に動画に撮られ、SNSで拡散された。当時、英ロイター通信も21年4月24日付の記事で「外国の大手ブランドにとって中国がいかに危険な場所になり得るかを示している」と報じている。
最近では、湖南省にある空港の駐車場に「テスラ立入禁止」という看板が堂々と設置されていたり、湖西省のテレビ局やその周辺でも「No Tesla Allowed」、つまり、テスラ車の駐車などが禁止になったりする事例が出ている。広東省では、高速道路の一部区間でテスラ車の利用ができなくなったとする報道もある。
こうした措置の理由は、テスラの特徴ともいえるそのハイテクさに原因がある。テスラ車には安全走行や自動運転を実現するため、車体の外にいくつものカメラを搭載している。そのカメラのおかげで、周囲の状況などを瞬時に把握できるわけだが、そのカメラが周囲のさまざまなものを撮影してしまうために、それが「スパイ行為」にあたると批判され始めているのだ。
ちなみに中国では、軍事施設は公開されておらず、どこに存在しているのかも分からない。普通の建物だと見えていても、軍事や公安などのセンシティブな施設である可能性があるし、当局が「あれは軍事施設だ」と言ってしまえば、それが事実となる。
具体例を挙げると、テスラ車には、スマホと車を接続することで、運転しながらハンズフリー通話できる機能を備える。このため、車体にはマイクを搭載しているが、そのマイクすら、窓を開けたり、感度を上げるなどの工作をすれば、「盗聴」に近いこともできなくはない。それも批判されているという。
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