こうしたエッジAIのメリットを生かして、リテールDXに取り組んでいるのが、北海道内にドラッグストアチェーンを展開している「サツドラ」です。
画像認識のコア技術開発とエッジAIカメラソリューションを提供するAWL(アウル、東京都千代田区)とタッグを組み、2019年から既設の防犯カメラをAI化するソリューションを、さらに21年からデジタルサイネージに接続するAIカメラを、順次約100店舗で導入を始めました。
クラウドAIを使ったカメラの設置価格はピンキリではありますが、1店舗当たり30万〜40万円ほどかかるのが一般的。加えて、通信コスト、映像を解析するクラウドサーバーの利用料などのランニングコストがかかります。エッジAIであれば、カメラの設置費用を抑えることで導入費用も安くできます。端末内で必要な処理をして最低限のデータをクラウドにあげるためランニングコストも安く抑えられるため、1店舗当たりのコストを抑えられます。AWLの北出宗治CEOによると、約200店舗を展開するサツドラでは、一般的なコストの数分の一程度に抑えることが「現実的なコスト感」だったといいます。
北出CEOによると、このAIカメラでは、来店客の属性や滞在時間、広告の視聴時間をAIが判別。このデータを分析し、商品配置の最適化や在庫管理の効率化を実現しています。
例えば、ある店舗では来店客の8割が「入口から直進している」という前提で、商品陳列が設計されていました。しかし、AIカメラのデータを分析すると、入店後に直進する来店客は実際には「全体の5割」。こうしたデータの取得・分析を、従来の人力でなく、AIが正確に行います。
さらに、こうしたAIカメラのデータをPOSデータにひも付け、商品の購入に至ったプロセスを可視化できるようにしました。売れた理由、売れなかった理由は、従来のオフライン環境では推測でしか把握できませんでしたが、このひも付けによってさまざまな要因が正確に把握できるようになっています。
他方で、AIカメラが来店客の性別や年齢などの属性をリアルタイムで瞬時に解析。時間、天気、気温といった要素と合わせて、店舗内のデジタルサイネージに最適な広告を配信することができるようになりました。
サツドラではこのデジタルサイネージ広告をメーカーに販売し、健康食品から飲料メーカー、日用品メーカーなど幅広い商品の出稿があったそうです。実際にエナジードリンクの販売数量が1.6倍に伸びたケースもあったといいます。実売につながる広告として出稿が増えてくれば、店舗売り上げ以外の新たな収益源として期待できるかもしれません。
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