デジタル技術を用いて業務改善を目指すDXの必要性が叫ばれて久しい。しかし、ちまたには、形ばかりの残念なDX「がっかりDX」であふれている。とりわけ、人手不足が深刻な小売業でDXを成功させるには、どうすればいいのか。長年、小売業のDX支援を手掛けてきた郡司昇氏が解説する。
近年、多くの小売業者やメーカーが注目する「リテールメディア」。文字通り、小売業がメディアを運営することで広告収益へとつなげていくモデルを指します。店舗やECサイトで商品を販売する以外のマネタイズ手段として、売り込もうとするITベンダーや広告代理店が乱立しています。
米国の大手小売業者が成功を収めており、多くの日本企業も参入を検討し、さまざまな試行錯誤を続けています。しかし、米国の成功モデルを日本で単純に模倣するだけでは、その効果を十分に発揮することは難しいと筆者は考えます。また、米国の「Retail Media」事業と日本でバズワード化している「リテールメディア」がどうも違う形態になってきていると感じます。
なぜ模倣だけではリテールメディアは成功しないのでしょうか。今回の記事では、米国の事例を「Retail Media」、日本でバズワード化しているものを「リテールメディア」と書き分けて紹介します。
20代で株式会社を作りドラッグストア経営。大手ココカラファインでドラッグストア・保険調剤薬局の販社統合プロジェクト後、EC事業会社社長として事業の黒字化を達成。同時に、全社顧客戦略であるマーケティング戦略を策定・実行。
現職は小売業のDXにおいての小売業・IT企業双方のアドバイザーとして、顧客体験向上による収益向上を支援。「日本オムニチャネル協会」顧客体験(CX)部会リーダーなどを兼務する。
公式Webサイト:小売業へのIT活用アドバイザー 店舗のICT活用研究所 郡司昇
公式Twitter:@otc_tyouzai、著書:『小売業の本質: 小売業5.0』
2019年、米国におけるアマゾンの総広告収入は100億米ドル(1.49兆円:1$149円計算)に達しました。その広告収入は22年に310億米ドル(4.62兆円)、26年には640億米ドル(9.54兆円)に増加すると予測されています。
アマゾンに次ぎ2番目に大きい小売メディアプラットフォームはウォルマートコネクトで、その総広告収入は26年に80億米ドル(1.19兆円)に達すると予測されています。直近の24年度第2四半期においても、前年比36%の成長ということです。
米国の小売企業はかねてよりRetail Mediaに取り組んできましたが、コロナ禍でオンラインストアの会員数が急増。小売企業が持つサイト、アプリにおける広告費の規模が拡大しました。オンライン決済の増加で、Retail Mediaが持つ売り上げへの影響が明らかとなり、小売企業やメーカーはその重要性を無視できなくなっています。
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