「品質満足度ナンバーワン」「口コミ人気度No.1」――このような、根拠が疑わしい“ナンバーワン広告”を目にしたことはないでしょうか。実態を反映せず、消費者を誤認させる不当表示だとして、消費者庁が景品表示法違反に基づく措置命令を出すケースが相次いでいます。
例えば、米国で同様の“ナンバーワン広告”を表示したらどうなるのでしょうか。恐らく訴訟に発展するでしょう。不当表示で消費者をだましたとして広告主が訴えられるのです。被告が大企業であれば社会的責任も大きく、懲罰的な賠償になり、数十億単位での請求額になります。
日本では広告の不当表示が問題になりますが、米国では現在、より悪質なインターネット上の不当行為が大きな問題になっています。
米FTC(連邦取引委員会)は6月、米ネット通販最大手のアマゾンが顧客の同意を得ずに有料会員に登録させたなどとして、連邦地裁に提訴しました。有料会員にならずに商品を購入する方法を分かりにくくしたり、解約手続きを意図的に複雑にしたりしていたということです。
読者の皆さんの中にも、例えばこんな経験をしたことはないでしょうか。便利でお得に見える「無料お試し期間1カ月間のサブスクリプション」に加入したものの、解約ページが分かりにくいばかりか即座にキャンセルできず、結局、課金されてしまった――。
このように、ユーザーを故意に迷わせたり、誤って購入させたりする方法を「ダークパターン」(Dark Pattern)といいます。企業はなぜ、こうした不当行為に手を染めるのでしょうか。
流通コンサルタント。
35年近い在米生活に基づき、米国の流通業に視察に訪れる経営者や企業を支援している。
公式Webサイト「激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ」では日々、米国小売業の最新情報を発信している。
ダークパターンは、英国のUXデザイナーのハリー・ブリヌル氏が2010年に生み出した言葉で、ユーザーをだまして意図しない行動へと誘導するユーザーインターフェース(UI)のことを指します。
ブリヌル氏は22年4月頃からダークパターンを「ディセプティブ・デザイン」(人をだますデザイン)とし、認知バイアスを利用してユーザーからより多くのお金と時間を使わせたり、個人情報を取得したりする手法と定義しています。
ダークパターンの認識が消費者にも広がることで、21年5月には米国の消費者団体であるコンシューマーリポートが通報サイト「ダークパターン・チップライン」(Dark Pattern Tipline)を立ち上げました。日本の消費者庁も「消費者自身にとって不利ないし意図せざる決定をさせる『ダーク・パターン』と呼ばれる手法は、海外でも国内でも問題になっています」と注意を呼びかけています。
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