リテール大革命

店舗と客の接点増には「ムダや遊び」が不可欠 仕掛けで変わる体験価値「小売DXと仕掛学」後編(1/3 ページ)

» 2023年09月04日 07時00分 公開
[濱川太一ITmedia]

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 好奇心をくすぐる工夫で、人々の行動変容を促す「仕掛け」。仕掛けと小売を掛け合わせたら、どんなシナジーが生まれるのか――。

 「仕掛学」の第一人者である大阪大学大学院の松村真宏教授は、DXに必要なデータは、人の行動履歴であり、人が行動することで初めて生み出されるものだと指摘する。その上で「仕掛けは人に行動変容を起こすことでデータを生み出すきっかけになり、DXのスターターとしては最適」だと指摘する。

 前編「パン店の試食客が2倍に ユニークな『仕掛け』が小売DXに必要なワケ」では、小売DXが失敗に終わる原因や、仕掛けがDXにもたらす可能性について、松村教授と「店舗のICT活用研究所」代表の郡司昇氏の対談内容を紹介した。

 後編では、小売業における仕掛けの活用シーンや、DXにエモーションが欠かせない理由について紹介する。

※本記事は7月に開催された「Firework Japan FES 2023」で「仕掛学で生み出すテクノロジーと人間の相互補強」をテーマに松村氏と郡司氏が行った対談をもとに構成しています。

なぜDXにはエモーションが欠かせないのか。イベントで対談する松村教授(右)と郡司氏(提供:Firework)

小売業における仕掛けの活用シーンは?

郡司: 次のトピックは「小売業におけるデジタルと仕掛けの活用シーンは」です。すごく大きなテーマなので、まずは顧客行動について説明したいと思います。自分が買い物をするときに、どういう行動をするかと想像しながら聞いてください。

 1つ目は計画購買です。最初から買うものを決めている場合を指します。「仕事帰りにいつものシャンプーの詰め替えを買ってきてよ」と頼まれてドラッグストアに買いに行く。この場合は、この商品が売っていて、手早く買えることが大事です。

 この場合はテクノロジーやデータの入る要素がすごく大きい。例えば、専用アプリなどで「うちの店にこの商品がありますよ」などと教えてあげるだけで、来店動機になる可能性があります。

人の購買行動は「計画購買」と「非計画購買」に大別される

 次が非計画購買。購入予定ではなかった商品を結果的に購入することで、4つに分類できます。1つ目は純粋衝動購買。売り場を見て「あ、こんな商品があったんだ」と初めて気づくケースです。アパレルのお店などに行くと、お店で初めて売っていたことに気付く商品がありますよね。

 2つ目の想起衝動購買は、店内を歩いているうちに「あ、そういえば家にしょうゆがなかった」「そういえば日焼け止めを買わないと」と思い出すパターン。店内にいる時間を増やすことで想起衝動購買をしてくれるのではないか、と小売り側は思うわけです。

 3つ目は提案受け入れ衝動購買。店員やPOP・プライスカードがおすすめしてくれて、それを受け入れて買うパターンです。4つ目の計画的衝動購買は、例えば「家にビールがないから買って帰ろう」と来店するけれど、購入する銘柄は「スーパーで新製品や値段を見て決めよう」というものです。

「店舗のICT活用研究所」代表の郡司昇氏(提供:Firework)

郡司: これにどうデジタルと仕掛けを使うのか。一つには、計画購買、非計画購買を問わず、かごとカートですよね。それらがない場合、購入する商品は両手で持てるだけになります。いっぱい買ってもらうとしたら、かごとカートを使ってもらうことで客単価が上がる。そのため、かごとカートの場所はものすごく大事なんです。

 そういう部分で仕掛けを使って、かごやカートを使ってもらう方法はないかと日ごろ考えているのですが、松村先生はどう思いますか。

松村: かごを使うと客単価が上がるのは知っていますが、仕掛けの場合は、使うところが少し違うかなと思っていて、まず商品を知ってもらうのが大事になります。

 人は、よく知らない商品は買わないので、買う前に「欲しい」と思ってもらわないといけません。商品を知ってもらうことが、実はすごくハードルが高いんです。店内にはものすごい数の商品が並んでいて、情報過多ですよね。そういうところで、いかに自分の商品を知ってもらえるか、というところに仕掛けは使えるのかなと思います。

「仕掛学」の第一人者である大阪大学大学院の松村真宏教授(提供:Firework)

松村: 例えば(前編で紹介した)パンの試食を増やすための実験(※)は、試食してもらう以外にも大きな意味があります。それは店との接点を増やすことです。

※パン店で試食する顧客が少なかったため、よりおいしかったほうのパンに、試食に使ったつまようじで投票してもらう仕掛けを取り入れた結果、試食する人が2倍に増えた。

 来店客にどちらがおいしかったかを聞くためには、両方を食べてもらわないと比べられません。両方を食べてもらうことで、それぞれの味を理解できます。おいしかったら記憶に残り、次回の来店時に買おうかなという人が増えるのではないかと期待しています。このように、店舗と客の接点を増やし、来店のきっかけを作るという点で、仕掛けは相性がいいのかなと感じています。

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