デジタル技術を用いて業務改善を目指すDXの必要性が叫ばれて久しい。しかし、ちまたには、形ばかりの残念なDX「がっかりDX」であふれている。とりわけ、人手不足が深刻な小売業でDXを成功させるには、どうすればいいのか。長年、小売業のDX支援を手掛けてきた郡司昇氏が解説する。
コロナ禍でネットスーパーの急成長に注目が集まっています。直近では流通大手のイオンが7月から、AIやロボットを活用した新サービス「Green Beans」(グリーン ビーンズ)を始めたほか、2022年には関東を中心にスーパーマーケットを展開するサミット(東京都杉並区)が、8年ぶりにネットスーパーに参入し話題を呼びました。
前回の連載「日本は周回遅れ? ウォルマートを成長させた『データ整備』と『物流改善』の極意」では、小売業におけるDXの重要性と、その基盤となる在庫管理と陳列位置情報のデータ活用について解説してきました。今回は、これらのデータ活用がネットスーパーの成功にどう寄与するのか見ていきます。
20代で株式会社を作りドラッグストア経営。大手ココカラファインでドラッグストア・保険調剤薬局の販社統合プロジェクト後、EC事業会社社長として事業の黒字化を達成。同時に、全社顧客戦略であるマーケティング戦略を策定・実行。
現職は小売業のDXにおいての小売業・IT企業双方のアドバイザーとして、顧客体験向上による収益向上を支援。「日本オムニチャネル協会」顧客体験(CX)部会リーダーなどを兼務する。
公式Webサイト:小売業へのIT活用アドバイザー 店舗のICT活用研究所 郡司昇
公式Twitter:@otc_tyouzai、著書:『小売業の本質: 小売業5.0』
ある日、筆者は小売大手が運営する開店直後の食品スーパーマーケットを視察しました。そこでは、コロナ禍を経てネットスーパーの受注が伸びていたためか、8人の従業員が紙のピックアップリストを元に店内を歩き回っていました。
各商品の陳列位置情報がないため、非効率に売り場を行き来しながらの作業となり、歩行距離は長くなります。
とはいえ、注文数に対して多くの人員が投入されているため、売り場からは次々と商品がピックアップされていきました。開店前に品出しを行っていないと、開店時の棚は必ずしも商品が詰まっている状態ではないこともあり、売れ筋商品の棚がスカスカになっていることもありました。
一方で、別の従業員たちがオリコン(折りたたみコンテナ)を積んだカートを押しながらスカスカになった売り場に品出しをしている光景も同時に見られました。こちらは5人で作業を進めていました。
ヤマダさんをはじめとした8人が500坪強の売り場の棚から商品を集めてバックヤードに持っていく。同時にサトウさんをはじめとした5人がバックヤードから売り場に商品を運んで陳列する。
何かおかしいと思いませんか?
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