スマホゲームの宿命「サービス終了」をどう乗り越えるか スクエニが用意した回避策(3/3 ページ)

» 2024年03月07日 08時00分 公開
[宮武和多哉ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

「サービス終了」で終わらせないために

 スーパーライトは、スマホフェスで行われた「グランドマスター決定戦」に多くのプレイヤーが参加するほど、ファンの熱量も高い人気タイトルだ。それをサービス終了するのは、もったいないようにも思える。

game グランドマスター決定戦(著者撮影)
game スーパーライト開発陣(著者撮影)

 しかし、近年は、新規顧客の獲得や売り上げの指標となるダウンロード数やセールスランキングが伸び悩んでいた。こうした状況から、スクウェア・エニックスは、ストーリークエストをしっかりと完結させた上で、スーパーライトを終了するという決断を下したのだろう。ただ、これまで熱意をもってスーパーライトをプレイしてきたファンにとってサービス終了は、これまでのプレイの履歴や、仲間として過ごしてきたモンスターが、データごと消え去ることを意味する。

 そうしたファンへの救済措置として、今回のスマホフェスでは、スーパーライトのデータをある程度引き継ぐ「オフライン版アプリ」の提供が発表された(2月1日から引き継ぎ可能、ただし2月29日までにオフライン版へのログインが必要となる)。オフライン版アプリでは、ユーザーは「ハイスコアクエスト」などを楽しめるだけでなく、これまでのプレイの履歴を思い出したり、仲間だったモンスターにも会ったりすることができる。こうしたオフライン版の提供により、サービス終了でファンが味わう喪失感を軽減する狙いだ。

 スーパーライトはすでに、他の『ドラゴンクエスト』関連のゲームアプリなどとコラボも行っている。やり込んだゲームを失うユーザーへ「終了後もたまに思い出して、ある程度充実したオフラインで楽しんでもらう」「コラボを通じて知った、他の『ドラゴンクエスト』関連のゲームアプリで遊んでもらう」という選択肢を、スクウェア・エニックスは提案する必要があった。そのため、今回のスマホフェスのようなリアルイベント内で、しっかり時間を取ってユーザーとともに、スーパーライトの歴史に幕を引いたのだ。

game 写真中央:『ドラゴンクエスト』生みの親・堀井雄二氏(著者撮影)

 もっとも、維持経費の掛かるオフライン版は、多くのユーザーを抱えるヒット作でない限りなかなか作られないのが現実だ。スマホフェスのあるMCは「ゲームは推せるうちに推せ!」(サービスを続けているうちに、プレイや課金で貢献しよう!という意味) と発言。愛着のあるゲームアプリを失う事態を避け、終了後もオフライン版アプリなどの充実したアフターサービスを引き出すためには、企業の本音としては「ユーザーもある程度はゲームに貢献してほしい」というところだろう。

game 『ドラゴンクエスト』スマホゲームの歴史(著者撮影)

 リアルイベントを開催する最大のメリットは、『ドラゴンクエスト』ファンの熱量が会場で可視化され、さまざまなアプリのプレイを深化させたり、新たなアプリのプレイに挑戦するきっかけになったりすることだろう。スマホフェスを開催したスクウェア・エニックスにとって、プレイヤー(ファン)に直接、『ドラゴンクエスト』のさまざまな楽しみ方を提案できた意義は大きかったのではないか。

宮武和多哉

バス・鉄道・クルマ・駅そば・高速道路・都市計画・MaaSなど、「動いて乗れるモノ、ヒトが動く場所」を多岐にわたって追うライター。幅広く各種記事を執筆中。政令指定都市20市・中核市62市の“朝渋滞・ラッシュアワー”体験など、現地に足を運んで体験してから書く。3世代・8人家族で、高齢化とともに生じる交通問題・介護に現在進行形で対処中。

また「駅弁・郷土料理の再現料理人」として指原莉乃さん・高島政宏さんなどと共演したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」(既刊2巻・イカロス出版)など。23年夏には新しい著書を出版予定。

 noteでは過去の執筆記事をまとめている。


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.