TSMCの工場誘致は、どんな意味があるのか。2027年半導体問題(2/2 ページ)

» 2024年03月24日 21時23分 公開
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 実は、それをあけすけに語った人物がいる。米国の大統領選で共和党から立候補していた実業家のビベック・ラマスワミ氏である。

 同氏は選挙戦で、「中国が台湾に侵攻したら、軍事介入するか」と聞かれて、「28年までは守る。だが、その後は事情が変わる。それまでに台湾の半導体工場を米国に移すからだ」と答えた。

 ラマスワミ氏はその後、選挙戦から撤退したが、いまやドナルド・トランプ前大統領の政権構想で、最有力な副大統領候補の1人に挙げられている。もともと、トランプ支持者であるだけに、同氏の発言は「トランプ氏の考えに近い」可能性がある。

 台湾防衛について明言を避けているトランプ氏自身も、米FOXのインタビューで、「台湾は米国から半導体を奪った」と語っている。

 米空軍大学の教授は21年11月、中国が台湾に侵攻したら「台湾は自らTSMC工場を破壊して、敵に戦利品を与えない焦土作戦を検討すべきだ」と提言した。軍事専門家も「台湾問題は半導体問題」と捉えているのである。

 アリゾナのTSMC第1工場が稼働するのは25年、第2工場は早くて27年からだ。熊本の第1工場は年内に稼働し、第2工場は27年末の稼働を目指している。つまり、日米とも27年末までには、最新鋭の工場が整うのだ。

 そうなると、その後は台湾の重要性が相対的に薄まる。ここをどう見るか。日米の安全保障にとって、「台湾の2027年半導体問題」は、重要な鍵を握る要因の1つになりそうだ。

長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) 

ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。


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