史上最高値を更新した日経平均株価に続いて「景気の良い話」が多く聞かれるようになった。
半導体受注生産で世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)が2月24日に開所した熊本工場の周辺で、早くも「半導体バブル」が起きているというのだ。
建築関連をはじめ収入が倍増したという人が多くおり、一部報道によれば、熊本工場のスタッフの中には、熊本県の最低賃金である898円を大きく上回る時給2000円の職種もあるという。さらに、台湾からやって来るTSMCの社員を見据えたホテルやマンションの建築ラッシュが起きていて、地価が数倍に高騰しているのだ。
同じ現象は、次世代半導体の国産化を目指すラピダス(Rapidus)の工場が建設中の北海道千歳市でも起きている。このような「半導体バブル」を追い風に、これまで幾度となく失敗してきた「日の丸半導体復活」を今度こそ成し遂げる、というのが岸田政権の描くシナリオだ。
実際、TSMC創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏も開所式のあいさつで「日本の半導体製造のルネサンス(再興)の始まりと信じている」と語っているし、既に気の早い経済評論家などは、周回遅れだった日の丸半導体が一躍世界のトップに躍り出る、なんて胸アツな「予言」をしているほどだ。
ただ、そんな風にみんなで盛り上がっているところに水を差すようで恐縮だが、今回もこれまでと同じ結末をたどる可能性が高い。特に今、熊本で起きている「TSMCバブル」に関していえば、「日の丸半導体復活」にはほとんど影響はない。
むしろ、日本国内でTSMCの存在感が増していけばいくほど、日本は「安い工場」というポジションが固定化されていく。ASEAN諸国に賃金が抜かれるのも時間の問題なので、製造拠点としてはもてはやされるかもしれないが、国産半導体は「衰退」の一途をたどっていくだろう。
なぜそんなことが断言できるのかというと「歴史の教訓」だ。
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