世界的企業の誘致で「半導体立国」を目指したマレーシアは結局、低賃金と世界的企業のサプライチェーンの多様化から、気がついたら「安い工場」という役割が定着してしまっている。
残念ながら、日本もこれと同じ道をたどる可能性が高い。
バブルだ高収入だと浮かれているが、シンガポールや中国都市部の賃金上昇に比べると、日本はまだまだ低賃金だ。また、TSMCからすれば日本は「台湾有事」に備えるのに最適のロケーションだ。台湾から熊本まで飛行機で1時間半なので、幹部や技術者たちの避難先としても機能する。
つまりTSMCにとって日本進出の動機は、米インテルなどがマレーシアに拠点を置くのと同じく、「安くて便利」以外の何者でもなく、「日の丸半導体復活の追い風」なんてストーリーは、岸田政権が一方的に抱いている「願望」にすぎないのだ。
実際、既に同じ「道」をたどっている。マレーシアでも日本と同じく「半導体バブル」の真っ只中なのだ。
例えば、「マレーシア、半導体復活か インテルが供給網の多様化で1兆円投資」(日本経済新聞 23年10月8日)という記事によれば、米インテルはマレーシアに日本円で約1兆円規模の投資をして、高度な3次元の半導体パッケージングの工場を建設中だ。独インフィニオン・テクノロジーズも同じような規模の投資で、パワー半導体の一種である「炭化ケイ素(SiC)」製品の工場を建設している。
投資する企業が異なるだけで、現象としてはまったく同じ「半導体バブル」が発生しているのだ。だから当然、同じ問題が起きる。分かりやすいのは交通渋滞だ。
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