半導体受託生産の世界最大手「台湾積体電路製造(TSMC)」が、米国アリゾナ州に建設中の工場が「当初の計画に比べて、遅れている」と、3月14日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)が報じた。記事は、工場建設に政府が補助金を出した日本と比べて、「ジョー・バイデン政権は、まだ補助金の支給を約束していない」と米政権に批判的だ。
これを読んで、私は「米国は半導体工場の誘致に懸命だったんじゃないのか」と驚いた。バイデン政権は2022年に半導体企業の誘致と研究開発を促進する「CHIPS法」を成立させていたからだ。
ところが、そうでもなかったらしい。
記事によれば、熟練工員の不足や建設費の高騰、地元の労働組合との対立などが遅れの理由で、支給する補助金額をめぐって同社と交渉が続いている、という。
そうだとすると、米国に比べて規模が小さいとはいえ、工場が完成した日本は一歩先んじた形だ。喜ばしい。
日米にとって、TSMCの工場誘致は一体、どんな意味があるのか。
経済面で言えば、直接の雇用拡大はもちろん、国内産業を刺激し、競争力強化につながるのは間違いない。
それ以上に重要なのは、「安全保障上のメリット」である。自国で先端半導体を生産できるようになれば、仮に台湾が中国に奪われたとしても、困らなくなる。逆に中国にとっては、日米にTSMCの工場ができるのは「狙った獲物を奪われた」かたちになる。
政府関係者は、まさか「中国との戦争に備えるためだ」などとは言えないので、明言しないが、これが「TSMC誘致の本当の狙い」だ。
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