画像生成AI、不動産業務にどう活用できる? 物件画像のクオリティーアップも不動産DXのいまを知る(1/2 ページ)

» 2024年05月07日 08時00分 公開

連載:不動産DXのいまを知る

不動産業界のDX推進において活用するAI技術や先端技術との親和性、活用方法やその効果、将来性などについて、アットホームラボ代表取締役社長の大武義隆氏が解説する。

 連載の第1回「物件情報の作成、AIがサポート アットホームが挑む不動産DXの現在地」では、生成AIなどの新技術が不動産業界にどのような革新をもたすかを紹介しました。

 第2回となる今回は、物件画像の作成に着目し、物件画像と相性の良い「画像生成AI」について解説します。

 住まい探しにおいて、物件画像は欠かせない情報です。不動産ポータルサイトに掲載するためには、物件画像の撮影だけでなく編集、加工など追加操作が必要な場面があります。不動産DXの推進において画像生成AIを活用することで、作業の効率化や顧客満足の向上につながることが期待されています。

 本記事では、画像生成AIの基本から不動産業務への活用方法、そして利点について探っていきます。

画像生成AIは不動産業務にどう活用できるのか。写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

著者プロフィール:大武 義隆(おおたけ・よしたか)

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アットホームラボ株式会社 代表取締役社長

アットホームに入社後、営業職・企画職などに従事。

2019年5月にアットホームのAI開発・データ分析部門より独立発足したアットホームラボにて、テクノロジー部門を統括し、不動産分野の課題解決に適したさまざまなAIモデルの企画を担当。23年4月より代表取締役社長に就任。


画像生成AIで物件画像のクオリティーが上がる

 画像生成AIとは、テキストで指示をすると自動で画像や映像を生成してくれる技術です。すでに画像生成AIを利用したサービスが多数登場し、多種多様な画像生成が可能となっています。そして個人の利用だけでなく企業側の導入も進んでおり、社内業務で活用する例も多くあります。

 画像生成AIのサービスで実際の業務に活用できそうなのは、画像処理ツール 「Clipdrop」というサービスです。同サービスは、仏のAIスタートアップInit MLが開発。同社は2023年3月、画像生成AI「Stable Diffusion」で知られる英Stability AIに買収されています。

 Clipdropはメニューが豊富で画像生成はもちろんのこと、撮影した画像に対して編集もできます。例えば、撮影した画像内に写りこんでいる通行人や、看板に記載のある電話番号などを消すことができます。

 他にも、外観画像の天候を曇り空から青空に変えることができるため、物件画像のクオリティーアップにもつながります。無料で利用できるのでぜひ一度試してみてください。

顧客は物件画像にどんな情報を求めているのか

 現在、住まいを探す上で不動産ポータルサイトを活用する消費者は増えており、アットホームの調査(※1)によると「不動産ポータルサイトで検索」する人は7割を超えています。不動産会社へ訪問する前にあらかじめインターネット上で物件の目星を付けていることが分かります。

(※1)オンラインでの住まい探しに関する調査 2023 賃貸編

 また不動産ポータルサイトを利用して賃貸物件を探している人を対象にしたアットホームの調査(※2)によると、不動産ポータルサイトで住まいを探す際、物件画像を確認している人は9割を超えました。そのうちの95%の人が、物件画像を見る際は、同じ場所でも角度を変えて複数の写真があったほうが参考になるとしています。

(※2)不動産ポータルサイトに関する調査

不動産ポータルサイトで住まいを探す際に物件写真を確認する人が9割を超える

 例えば、キッチンでは「まな板を置ける広さか」「シンクの大きさ」、バスやトイレでは「排水溝の位置」「温水洗浄便座の有無」など、1枚の画像からさまざまな情報を読み取っているようです。

顧客は1枚の画像から複数の情報を読み取っている

 つまり、物件画像は量だけでなく、質も住まい選びの決め手となる重要な要素となります。いまや物件画像は、住まいの空間や設備が自分のライフスタイルに合うかどうかを判断する材料として活用されているのです。

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