レンタルビデオ→書籍→? 「SHIBUYA TSUTAYA」オープンのCCC、二度のピーク経て変化を続けるビジネスモデルに迫る(2/5 ページ)

» 2024年05月18日 05時00分 公開
[山口伸ITmedia]

動画配信市場の台頭で店舗が縮小 独自サービスも消滅

 第1次ピーク後の2010年3月期には、売上高は2000億円を下回った。子会社を非連結化した影響もあるが、主戦場だったレンタル市場が成熟期から衰退期にあり、直営店の売却やレンタル単価の減少も業績に影響した。

 CCCにとって2010年代は、新たに台頭してきた動画配信市場への対応に苦慮した時代といえるだろう。以前も似たようなサービスはあったが、特にネット環境の整備やスマホの普及が市場拡大につながった。2012年には「U-NEXT」が従来のPCや専用テレビに加えてスマホ・タブレットにも対応するようになり、2015年にはNetflixが日本に上陸。

 その間、TSUTAYAはピーク時の2012年に約1470店舗を展開していた店舗網の縮小を余儀なくされ、閉店や一部店舗でのレンタルサービス終了を進めていった。ここ1年でも、およそ100店舗を閉鎖した。現在、TSUTAYAは約800店舗(9割がフランチャイズ店)であり、そのうち約600店舗でCDやDVDのレンタルサービスを提供している。

 ただ、TSUTAYAは動画配信サービスの台頭に手をこまねいていたわけではない。例えば、独自の動画配信サービスとして2008年に「TSUTAYA TV」を開始した。コンテンツ数などで競合に勝てなかったのか、2022年にはdTVへと移管したものの、dTVも2023年6月に終了、現在は後継の「Lemino」としてサービスを展開している。

カフェ併設型が好評 出版不況でも売り上げは絶好調

 他方、書店事業は成長し続けた。前述の通り1994年にTSUTAYA BOOK NETWORK事業を始めており、書籍・雑誌販売を行う店舗数は2001年で250だったが、2016年には800を超えた。売上高も2001年の349億円から年々増加し続け、2020年には過去最高の1427億円となった。なお公開されている直近の売上高は21年の1376億円と、20年よりはやや落ち込んでいる。2012年には雑誌・書籍販売で紀伊国屋書店を抑え、国内の書店でトップとなっている。

 需要が減少したレンタルDVD・CDのコーナーを、書籍にして業態転換を果たしているのである。一部店舗ではスターバックスやタリーズなどを併設し、ドリンクを買えば席で購入前の本を読めるようにしている。

 こうしたカフェ併設型の店舗は通常の書店と異なり、ライフスタイル提案型のスタイルとなっている。例えば、雑誌のコーナーが広く、料理や旅行など、レジャーごとに本を配置。雑貨の取り扱いも多く、料理本コーナーでは実際の鍋や食器類などを置いていることもある。敷地面積にしては書籍数が少ないため、一部読書愛好家の間で批判されることもあるが、インテリア重視で、つい寄ってみたくなる内装を意識しているため、人気も根強い。

「TSUTAYA BOOKSTORE 下北沢」では、地元・下北沢の雑貨などを展開している(出所:同前)

 出版不況に苦しむ書店業界だが、そんな状況でもTSUTAYAが成長できた背景には、こうしたカフェ併設型店舗の好調があると考えられる。近年では他の書店チェーンでもカフェを併設したり、雑貨コーナーを置いたりするなど、TSUTAYAを意識した設計を見かける。

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