衰退するシャープは「日本そのもの」か “世界の亀山モデル”が失敗パターンにハマった理由スピン経済の歩き方(3/7 ページ)

» 2024年05月22日 11時03分 公開
[窪田順生ITmedia]

分かりきっていた赤字転落の理由

 実は2023年3月期連結決算で、シャープが6年ぶりに赤字転落した理由は分かりきっている。それは経営危機で株の大半を手放していた、液晶パネルを生産する「堺ディスプレイプロダクト」(SDP)を、2022年6月にファンドから買い戻して完全子会社化したことだ。

 近年はSDPの業績が悪化し、減損損失を計2205億円計上。この低迷ぶりが2024年に入ってからも改善の兆しがなく、テレビ向け大型液晶パネルの生産が終了になったという流れだ。

大阪府堺市にある「堺ディスプレイプロダクト」(SDP)の液晶パネル工場(出典:公式Webサイト)

 このSDP買い戻しという「経営判断」に対しては、かねてシャープの株主から厳しい批判が上がっていた。

 SDPは鴻海の傘下に入った時に、構造改革の一環として株の大半が手放された。つまり、シャープの業績の足を引っ張る存在だと見なされていたのだ。そこから時を経て、SDPはさらに厳しい経営環境に陥っている。

 SDP自身が公式Webサイトで「リーディングカンパニー」だと胸を張る大型液晶パネルは、世界市場では中国の京東方科技集団(BOE)や華星光電(CSOT)、韓国のサムスン電子やLGディスプレイが幅を利かせているのだ。

 そこに加えて液晶パネルの市況自体も悪化。そんな最中にシャープはSDPを買い戻して完全子会社化したものだから株主は大激怒。「経営判断を誤った当時の経営陣は責任をとるべき」「これは株主への重大な裏切りではないか」と株主総会では厳しい声が続出したのだ。

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