ただ、米国のクラウドサービスへの依存度が高まりすぎるのはいかがなものか、という声もある。地主に畑を借りて農業を営む小作人のように、デジタルサービスでクラウドのスペースを借りてビジネスをする「デジタル小作人」になってしまう、と危惧も出ているのだ。しかも、デジタル小作人が増えれば増えるほど、デジタル赤字もどんどん膨らんでいく。
生産性が上がると考えれば素晴らしいが、他方でお金が海外に流出することもまた事実である。
さらに日本では「ガバメントクラウド」の整備が進んでいる。ガバメントクラウド構想では、各府省庁で利用する約1100の政府情報システム全てにガバメントクラウドを利用することを求めている。さらに全国1741の自治体に、2026年3月末までに20業務でデジタル化を行い、ガバメントクラウドを利用するよう要求。政府情報システムのインフラ基盤になるとされる。
問題は、このガバメントクラウドを提供するためのクラウドサービスが、ほとんど米国企業が運営するものだということだ。「Amazon Web Services(AWS)」「Google Cloud」「Microsoft Azure」「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」の4社のサービスが提供されることになっているが、政府が求める要件を満たす企業がこの4社しかなかったのである。
ただ2023年11月には、国産を導入すべきとの声もあり、大阪に本社を置く「さくらインターネット」が条件付きでガバメントクラウドに参加することになった。
このガバメントクラウドで米国のクラウドサービスの利用が広がっていけば、さらに日本人のお金が海外に流れて、デジタル赤字を膨らませることになる。
さらに、生成AI関連のサービスが普及すると、このデジタル赤字はさらに悪化するだろう。もはや、日本はデジタル大手による「デジタル植民地」状態にあると言う人もいるくらい、ますます海外のサービスに依存していくことになる。
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