どうなる「イトーヨーカ堂」 衣料品売場で起きているすごい変化 伝統的な強みを取り戻せるか長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/6 ページ)

» 2024年05月28日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

不採算店の閉店

 近年の経営陣は、物言う株主の米国バリューアクト・キャピタルの要求に悩まされてきた。好調なセブン‐イレブンと不採算の他の部門の経営を切り離すべきだという主張だ。2023年、グループのそごう・西武を、米国投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに売却した。

 イトーヨーカ堂の売却も求められている。2024年2月期決算は、南関東で食品スーパーの「ヨークマート」や「ヨークフーズ」を展開するヨークを吸収合併したため、売上高は7313億円(前年同期比12.7%増)と増えたが、経常損失3億円(前期は11億円の利益)と赤字に転落した。なお、最終損益は4年連続で赤字となっている。

ヨーク・デリの商品(出所:リリース)

 店舗数が226と大幅に増加したのは、ヨークの店舗を加算したからだ。2023年8月末時点では、イトーヨーカ堂の店舗数は125、ヨークの店舗数は103だった。

 イトーヨーカ堂の売り上げは全盛時の半分以下で、利益も出ていない。右肩下がりという印象が強い。

 しかし、チームMDの効果は、食のニーズを多角的に分析する上で、セブン‐イレブンにも恩恵を与えたと見られる。セブン&アイの経営陣がイトーヨーカ堂を一緒に経営するメリットを挙げて反論し、バリューアクトの要求に応じなかったのにも理由があった。

 2024年2月には、千葉県松戸市にセブン‐イレブンとイトーヨーカ堂が協業した、セブン‐イレブン新業態「SIPストア」1号店をオープン。平均的なセブン‐イレブンの売り場面積は約40坪だが、SIPストアは約88坪を有し、生鮮食品、日配品、冷凍食品、加工食品が強化されている。

SIPストア外観(出所:セブン&アイ・ホールディングス公式Webサイト)
SIPストア内部(出所:セブン&アイ・ホールディングス公式Webサイト)

 セブン&アイは近年の決算で、イトーヨーカ堂の売上高における食品、衣料品、住居関連の売上構成比を出していない。公表されているうちで最も新しい2018年度の実績を見ると、食品は45.3%にまで高まっているのに対して、衣料品は12.7%にまで衰退。住居関連は13.4%で全盛時より売上構成比はあまり減っていなかった。

 つまり、食品が順調なのに対して、衣料品の落ち込みが激しかったということだ。

 同社は2023年3月にアパレル事業からの撤退を発表した。食品を軸にした売り場づくりという構造改革に着手するのは遅すぎたと思われるほどだった。

 そればかりか、イトーヨーカ堂は不採算店33店を2026年までに閉店するとしている。

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