梅津尚宏・イトーヨーカ堂執行役員専門店事業部長は、「イトーヨーカドーのお客さまは高齢化しており、30代、40代の人たちにもっと来てもらえるような衣料品売り場を目指した。弊社は食品を中心とした成長戦略を描いているので、食品売り場も冷凍食品、総菜を強化するなど品ぞろえを見直して、買い回りが起こるような波及効果を狙った」と説明する。
木場店の事例では、4月24日の時点でアパレルの客数は改装前に比べて40%増。しかも新規の顧客が12.4%増えた。アパレルと食品を両方とも買った顧客は82%に上った。
インスタグラムを使った販売促進、ZOZOTOWNでのネット通販の効果も上々で、狙い通り店舗全般が活性化しているという。
商品はレディース中心だが、メンズ、キッズの商品もあり、ファミリーのニーズに対応。雑貨も2割ほどのスペースを取り、充実している。店舗面積は100〜300坪と幅広く対応する。
また、前出のSIPストアへの商品提供も行っていく。
ファウンドグッドは、アパレルからのチームMDを売り場全体に広げようとした、かつての取り組みと重なる部分がある。それは、日本初とも言われるボランタリー・チェーンを協業により立ち上げて成功を収めた羊華堂洋品店の先進性をもほうふつとさせる。アパレルが元気でなければイトーヨーカ堂らしくない。そうした伝統の力が蘇ってきたのを感じさせる。
4月10日、セブン&アイはイトーヨーカ堂を再上場させる計画を打ち出した。その話を聞いた時は非現実的に思われたが、ファウンドグッドのような革新的な売り場が今後も連続的に立ち上がってくるのであれば、希望が持てる。早速、5月22日には、惣菜の新ブランド「YORK DERI(ヨーク・デリ)」を発表した。2月に稼働を開始した、プロセスセンターとセントラルキッチンの機能を持つ食品工場「Peace Deli 千葉キッチン」(千葉市)を生かして、味・品質・鮮度を備えた新商品の開発と、店舗オペレーションの生産性向上が可能になったという。
創業100年を超えたイトーヨーカ堂が伝統と現代性を融合して再生し、令和の新しいGMSの成長モデルを構築できるか。期待したい。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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