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日立が踏み出した「副業解禁」 “試行1年”で磨き上げた制度設計の「4つの承認基準」とは?

» 2026年02月18日 07時00分 公開
[河嶌太郎ITmedia]

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 2024年10月に、社外副業制度を本格導入した日立製作所。そこに至るまでには周到な準備があった。

 同社は2023年10月に、社外副業制度の「試行」を開始。つまり1年間の「試行期間」を設けた形だ。社外副業制度の対象は正社員だけでなく有期契約社員やシニア層を含む全従業員。原則として、業務委託型の非雇用型副業を認めているという。

 利用は順調に広がり、コンサルや企画業務のほか、NPO活動や個人起業、中には地域活動でのビール醸造など(【日立「Lumadaの中核人材」が副業でビール醸造 地域貢献がマネジメント力を育てた理由】参照)、多様な形で社員の挑戦を後押ししている状況だ。

 全従業員を対象としながら、いかにして「本業への支障」や「情報漏えい」といった大企業特有のリスクを管理しているのか。同社の労務・雇用企画を担う人財統括本部の小野遵英氏(人事勤労本部 トータルリワード部 労務・雇用企画グループ主任)に、本格導入までのプロセスと、日立独自の4つの承認基準について聞いた。

photo 日立製作所人財統括本部 人事勤労本部 トータルリワード部 労務・雇用企画グループ主任の小野遵英さん

検討開始から5年、試行1年 日立が副業を解禁した理由

――2018年のモデル就業規則改定をきっかけに、日立でも社外副業制度の検討が進み、試行が2023年に始まりました。その経緯を教えてください。

 当社の社外副業制度は、検討自体はかなり前から始まり、2020年ごろから本格的に議論が進みました。当時、経団連や厚生労働省が副業を推進する動きを強めており、コロナ禍で働き方の見直しが進んでいた時期でもあります。そうした背景を受けて、労働時間管理の通算や安全面についての責任の所在など、制度設計上の論点について国のガイドラインが少しずつ明確になってきました。そのガイドラインを踏まえながら、社内で試行に向けた準備を進めたのが最初のステップです。

――2023年10月の試行から、本格導入まではどういった流れでしたか。

 試行は2023年10月にスタートし、1年後の2024年10月に制度として正式導入しました。試行初月の副業件数は日立全体で20数件ほどでした。これが本格導入時には234件と、約10倍に増えました。試行期間中に副業を経験した従業員の声を丁寧に拾い上げ、制度上の改善点を整理した上で、本格導入に踏み切った流れです。

――政府のガイドラインの整備を待たざるを得なかったことによって、モデル就業規則改定から5年かかったのでしょうか。

 そうですね。法制度の観点からも、国の方針は捉えるべきであり、慎重に対応を進める必要はあったと考えています。当社の場合、社外副業と並行してグループ内での人材交流や社内副業制度の整備も同時期に検討を進めていました。

 日立グループは事業領域も広く、ジョブ型人財マネジメントへの転換を含め多くの施策が動いていた時期でした。そのため、副業制度もそれらと連動しながら検討を進める必要があり、全体の整合性を取りながらの導入になった面もあります。

申請は80人に1人 独自の「4基準」と非雇用型の原則

――現在の副業制度の利用状況について教えてください。

 2024年度末時点で、社外副業の申請・実施件数は318件になっています。対象は社員に限らず、有期雇用の従業員やシニア層も含めた全従業員です。対象者全体が約2万6000人ほどですので、単純計算すると80人に1人ほどの比率になります。

――今後はこの件数をどのようにしていきたいと考えていますか。

 現在は月平均で20件ほど増加しています。導入以降、比較的順調に利用者が拡大してきていると見ています。ただし、明確な数値目標を設定して「1000人に増やそう」「2000人にしよう」といった形にはしていません。まずは制度を利用する従業員一人一人が副業を通じてスキルやキャリアの幅を広げられるようにサポートすることを重視している状況です。

――副業をする際、どのようなルールや制限を設けているのでしょうか。

 大まかに申し上げると、社外副業を制限する基準は4つあります。1つ目は本業に支障をきたす場合、2つ目は業務上の秘密が漏えいする場合。3つ目は競業によって自社の利益が害される場合、4つ目は自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合です。

 副業可否を判断するにあたっては、この4つの基準に該当していないかをまず確認します。日本では職業選択の自由が認められているため、企業が副業を広く制限することは基本的にできません。そのため当社でも、こうした基準をもとに個別に判断しています。

――副業の形態については、どのような制限がありますか。

 当社では従業員の副業を「雇用型」と「非雇用型」の2つに分類していますが、原則として認めているのは非雇用型、つまり業務委託といった形式です。一方で、定年を迎えられたシニア社員など、本業の勤務日数が週5日未満の非常勤勤務者については、残りの勤務日であれば雇用型の副業も認めています。

巨大組織の変革に不可欠な「制度の透明性」

 以上がインタビュー内容だ。大規模組織で「個人の自由」を解禁するには、同等の「制度の透明性」が不可欠である点は言うまでもない。

 同社は5年の歳月をかけてガイドラインを精査し、1年間の試行で現場の懸念を潰し込んていった。いかにして「キャリア自律」と「リスク管理」のバランスを取るか。現在の制度は、これまでの試行錯誤の賜物といえる。

 4つの承認基準を明文化し、属人的な判断をなくした過程は、多くの企業にとっても再現性が高い。続編では、この制度の中で、実際にどのようなキャリアが生まれているのかを、具体的な実態からお届けしていく。

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【イベント情報】「ジョブ・クラフティング」のすすめ

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