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会員数「1億人超え」 欧州最大ホテルチェーンが日本で仕掛ける“脱中国人依存”の戦略2028年「ラッフルズ東京」上陸

» 2026年02月17日 07時00分 公開

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学研が挑む"真のDX"──「本当に使われるデジタル」で目指す教育価値のバリューアップ

【開催期間】2026年1月27日(火)〜2月25日(水)

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【概要】学研グループは、DXを目的化するのではなく、現場と顧客にとって“本当に使われるデジタル”を出発点に教育価値のアップデートに挑戦しています。本講演では、現場で浮き彫りになった課題や、実際に行ってきた改善や仕組みづくり、そこで得られた知見がどのように学研のDX推進を形づくんできたのかをお伝えします。既存のデジタル活用の成果と学びを振り返りながら、学研が目指す“真のDX”の姿をご紹介します。

 欧州最大のホテルグループである仏アコーが、日本をアジアの最重要市場と位置付け、積極的にビジネスを展開している。

 2026年5月に「東急ステイ メルキュール 広島」、2027年末には「プルマン東京銀座」のほか、プレミアムクラスのブティックホテル「Mギャラリー」も長野と新潟でオープン。2028年には最高級ブランド「ラッフルズ東京」が上陸するなど、攻めの姿勢を崩さない。

 2024年4月には傘下のホテルブランド「メルキュール」と「グランドメルキュール」22軒を一斉開業(【6471室を一斉開業する欧州最大ホテルチェーン 「投資は回収できる」と自信のワケ】参照)。110カ国・地域、45以上のブランド、5700以上のホテルで展開する会員向けのプログラム「ALL Accor」を強化するなど、顧客体験(CX)を向上させることで、日本市場におけるブランド浸透を加速させている。

 日本事業を統括するアコージャパンのディーン・ダニエルズ社長に、日本市場戦略の展望を聞いた。

photo01 ディーン・ダニエルズ アコージャパン社長。ニュージーランド出身。ホスピタリティースタンダードインスティテュードを卒業後、2005年にホテリエとしてのキャリアをスタート。2008年にアコーに入社し、フロントマネージャー、料理飲料マネージャー、オペレーションマネージャー、ホテルマネージャーを経て、2013年にメルキュールクイーンズタウンリゾート総支配人に就任。2016年の来日以降は、メルキュールホテル札幌を拠点に北海道と沖縄エリアのエリアマネージャーを務め、2020年9月よりアコージャパンの代表取締役に就任

専用ラウンジ、高速WiFi、アーリーチェックイン 会員制度を強化した狙い

 アコーは日本では、メルキュール以外に「イビス」「ノボテル」「フェアモント」「プルマン」といったブランドを運営している。合計で46軒、1万1000以上の客室を展開しており、現在は特にインバウンドの獲得に力を入れている。

photo01 2027年にオープン予定のプルマン東京銀座(プレスリリースより)

 日本政府観光局(JNTO)が1月21日に発表した2025年の訪日外国人旅行者数は、前年比15.8%増の4268万3600人と過去最高を記録した。同社がこの旺盛な需要を取り込むために強化したのがALL Accorだ。

 このプログラムは、入会費・年会費無料のALL Accorと、220ユーロ(約4万円)または1万4000ポイントで登録できる年会費制の「ALL Accor Plus Explorer」の2層構造となっている。日本でも宿泊や飲食で貯(た)めたポイントを次回の宿泊や、JAL・楽天ポイントなどの提携ポイントへ交換できるようにした。そのほか、スポーツ観戦や限定イベントへの招待など、世界で7000以上の体験プログラムを用意しているのが特徴だ。グローバルでもアメリカンエクスプレス、ハーツ(レンタカー)など100社以上のパートナーと組んでいる。

 同プログラムのメンバー数は世界で1億人を超えるなど右肩上がりだ。特にこの5年間で2倍となっていて、2024年には1100万人の新規登録者を獲得した。ダニエルズ社長によると、日本でも、会員数が2019年から年平均で4〜5%増加しているという。

 「メンバーにはステータスに応じて、アーリーチェックイン、レイトチェックアウト、ルームアップグレード、エグゼクティブラウンジへのアクセスという特典を付与しています。予想以上に効果を発揮したのが、会員専用のWi-Fiでした。通信スピードを速くしたことが、会員獲得に貢献してくれました」

 会員による利用金額は、非会員の2倍以上になっているという。年会費制の「Plus Explorer」では、同社が運営するアジア・太平洋地域の1300以上のホテルで毎年1泊分の無料宿泊を提供。利用者10人までは料理を最大30%オフとするなど、アコーを選んでもらうための仕掛けを徹底している。

photo01 「ALL Accor」メディア向け説明会でプログラムの解説をしたロイヤリティ担当の上原央美さん(左)と、アコーPR担当のピレス エミリー愛美さん(右)

「日本の地方」へ送客 多国籍な集客でリスクを分散

 2024年に一斉開業した「メルキュール」「グランドメルキュール」は、地方に多くのホテルを構えていて、地方に送客することが可能だ。以前のインタビューで、ダニエルズ社長は「オーバーツーリズム解消の一助になる」と話していた。

 「現在は過去のパフォーマンスと比較すると、客室稼働率も客単価も上がっています。これは実際に、日本の地方を訪れる人が存在していることを意味します。オーバーツーリズム解消につながっていると考えます」

 インバウンドの動向で懸念されるのが中国市場だ。2025年末に高市首相による台湾有事の答弁に反発した中国政府が、渡航自粛を国民に呼びかけて以降、一部で渡航自粛の動きがある。だが、ダニエルズ社長は「当社へのインパクトは限定的」と話す。

 「(静岡県の)浜名湖や札幌市にあるホテルなど、一部に影響はありますが、当社の顧客層はもともと多国籍です。中国人観光客がコロナ前の水準まで完全に回復しきる前から、他国からの送客を強化してきました。特定の国に依存しすぎない構造が功を奏しています」

 今後は日本と同じ右ハンドルである英国や豪州、ニュージーランドからの観光客をターゲットに据えているという。「インバウンドは、バスツアーが多めでしたが、今後はレンタカーを利用するFIT(海外個人旅行)向けパッケージを用意してはどうか? と旅行代理店と話しています。まだまだ伸びしろがありますよ」

レベニューマネジメントにAIを活用 410日先までの宿泊料を予測

 訪日外国人が右肩上がりとはいえ、ホテル業界の競争は激しい。宿泊料の過度な割引などによる客単価の下落を防ぐため、同社はAI収益管理システム「IDeaS」を導入している。このシステムは、過去の宿泊データや市場トレンドをAIが分析し、410日先までの適切な宿泊料を1日3回予測するサービスだ。

 「ただIDeaSは『導入=即競争優位になる』ものではありません。同業他社も同様のツールを使える以上、もはや経営判断を支えるための必須インフラです。マーケットを俯瞰し、適切な価格を設定するのには役立っています」

 また、蓄積されたデータを活用し、顧客のニーズに合わせた体験を企画している。例えば、データから「アコーの会員にはテニスファンが多い」と判明したため、仏テニス連盟とコラボし、ジュニアシリーズの東京開催などを実施した(【欧州最大ホテルチェーンが、テニス「全仏オープン」とタッグを組んだワケ】参照)。今後はパリ・サンジェルマン(PSG)などのサッカーやバスケットボール(米NBA)の試合観戦など、スポーツに特化した体験をさらに拡充していく。

 ダニエルズ社長は「顧客体験が差別化のカギになる」と語る。日本でも茶道やキャンドルライトなど独自の体験を提供することで、宿泊プラスアルファのCX向上に取り組む構えだ。

photo01 日本でも茶道やキャンドルライトなど独自の体験を提供。宿泊プラスアルファのCX向上に取り組む(アコー提供)

人材教育の徹底とラグジュアリー戦略 2028年「ラッフルズ東京」への布石

 アコーは従業員のことを「ハーティスト」(ハート+アーティスト)と呼ぶ。ホテル数の増加に伴い、2019年は1250人だった従業員数が、2025年には4000人以上まで急増した。企業は急成長をすると、どの業界でも人材教育が追いつかないケースがある。

 「当社は『アカデミー』と呼んでいますが、ブランドトレーニング、オンボーディングなど、毎月、いろいろなトレーニングを実施しています。正直なところ、急成長したことによって少々、サービスに乱れが生じることがないわけではありません。そこは、日々の業務でお客さまから学ぶのが一番だと思っていますが、私たち経営層が、ベストなトレーニングプログラムを作らないといけないと考えています」

 今後の目玉は、2028年の「ラッフルズ東京」開業だ。同ブランドは1887年にシンガポールで誕生。作家・村上龍の長編小説『ラッフルズホテル』の舞台にもなった。

 ラグジュアリーホテルでは、2025年7月に「フェアモント東京」をオープンさせている。

 「これまで日本市場では3つ星ホテルを中心に展開してきました。これからはラグジュアリー層へのフォーカスを強めます。ラッフルズは日本人の認知度も高く、フェアモントを含め日本にフィットしたブランドだと確信しています」

 ラグジュアリーブランドの拡充は、ポイントプログラムの活性化にも寄与する。「ラッフルズなどの憧れのホテルに、ためたポイントで泊まる」という目標を会員に提示することで、グループ全体の利用頻度を高める狙いだ。

 「両ホテルは、人々に夢を与えるホテルです。ラッフルズに宿泊することを目指して、(傘下のホテルに宿泊して)ポイントをためる会員の方もいるくらいです」

 また、広島に開業する東急ステイ メルキュール 広島では、客室内に洗濯機やキッチンを備え、長期滞在ニーズに応える。同社が運営する国内ホテルの平均滞在日数は1.5泊で、日本人客の滞在期間が一番長いのは沖縄の平均約3.5泊だという。広島でも同様に平均滞在日数の引き上げを狙う。

日本国内では「アクティブユーザー数」に課題

 今後の課題は、日本国内におけるALL Accorのアクティブユーザー拡大だ。登録者数は多い一方、日常的な利用率にはまだ伸びしろがある。

 解決策の一つとして検討しているのが、クレジットカードの創設だ。「クレジットカードを通じてポイントがたまる仕組みを整えれば、利便性が向上し、アクティブユーザーを増やせる可能性が高まります。クレジットカードには保有すること自体がステータスという一面もあります。真剣に検討しなければなりません」

 ALL Accor成功のカギは、航空会社のマイレージプログラムのように、生活に密着した存在になれるかどうかにある。日本市場を深く理解するダニエルズ社長が仕掛ける今後の戦略に注目だ。

photo01 メンバーシッププログラムの「リミットレスエクスペリエンス」の様子(左からフランスのジャーナリストであるフローラン・ダバディ氏、スペシャルゲストの松岡修造氏、大会アンバサダーである錦織圭氏を迎えたトークセッションの様子。2024年11月撮影:武田信晃)

【イベント情報】学研が挑む"真のDX"

学研グループは、DXを目的化するのではなく、現場と顧客にとって“本当に使われるデジタル”を出発点に教育価値のアップデートに挑戦しています。本講演では、現場で浮き彫りになった課題や、実際に行ってきた改善や仕組みづくり、そこで得られた知見がどのように学研のDX推進を形づくんできたのかをお伝えします。既存のデジタル活用の成果と学びを振り返りながら、学研が目指す“真のDX”の姿をご紹介します。

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