インタビュー
» 2020年07月06日 15時51分 公開

アフターコロナの旅行需要はどうなる?:コロナ直撃で「稼働率83.5%減」の衝撃 ホテル業界の経営者に求められる対策とは? (1/3)

新型コロナの影響によって深刻なダメージを負ったホテル業界。PwCコンサルティングは、影響をまとめたレポート「COVID19:ホテル業界への影響」を6月にまとめた。今後の業界見通しと、経営者に求められる施策とは?

[河嶌太郎, 今野大一,ITmedia]

 新型コロナウイルスで自粛が求められていた、都道府県をまたいだ全国の移動が6月19日に解禁された。

 8月からは、国内旅行の振興を促す政府主導の事業「Go To キャンペーン」が始まる予定だ。観光需要喚起策として実に補正予算から1.7兆円が計上されている。これはクーポンなどを通じて宿泊費や旅行先の飲食費や土産物代、現地の移動などに掛かった交通費などを助成するもので、その金額も、日帰りの場合は1人最大1万円、宿泊を伴う場合は、1人1泊あたり2万円が上限となっている。

 政府の施策を考えれば観光業界の展望は明るいようにも思える。だが、それは裏を返せば、新型コロナウイルスの影響によって、観光業界にそれほどテコ入れが必要なほど、深刻なダメージを与えているということでもある。

 コロナによって、ホテル業界にどれほどの影響が出ているのか。大手コンサルティングファームのPwCコンサルティングは、影響をまとめたレポート「COVID19:ホテル業界への影響」を6月にまとめた。

phot マスクを着用したホテルの従業員が体温をチェックしている風景(三井ガーデンホテル日本橋プレミア、写真提供:ロイター)

「稼働率83.5%減」「客室単価前年比の半分以下」 アパホテルは?

 まず、コロナ禍の客室宿泊施設の稼働率はどうだったのか。レポートによると、2020年4月の月次稼働率は前年比83.5%の減少、平均客室単価は前年比47.5%減、全体の宿泊者数は77%の減少となった。

phot 2020年4月の日本全国平均稼働率(STR2020作成、PwCコンサルティング「COVID19:ホテル業界への影響」より)

 この動きは1つのホテルで例えるならば、ホテルの部屋が埋まっている数が前年比の2割以下になり、さらに一部屋あたりの宿泊料も半額近くになってしまったということだ。一般的に宿泊施設は全体の稼働率が下がれば、需要喚起のため一室当たりの料金も下げざるを得なくなるため、経営者には「二重苦」がのしかかることになる。

phot 延べ宿泊者数の前年同月比。4月は全体の宿泊者数が77%の減少となった(観光庁『宿泊旅行統計調査』を基にPwCコンサルティング作成。PwCコンサルティング「COVID19:ホテル業界への影響」より)

 この客室単価の下落を逆手に捉えたとみられるのが国内大手ホテルチェーンのアパホテルだ。6月末までアパホテル公式サイト・アパアプリという「アパ直」限定で1人1泊2500円のプランを提供していた(アパホテル、素泊まり2500円の「新型コロナウイルスに負けるなキャンペーン」開始参照)。同社の広報担当者は筆者の取材に対し「他社には追随できない破格の金額で販売することで、他社を定宿としているお客さまが一度アパホテルにご宿泊いただき、定宿の鞍替えによるアパホテルのシェア拡大も目的としています」と回答した。

 その上で「事業として長期的な目で戦略を考えた場合、2500円からという金額では、短期的には利益はほぼないものの、長期的には必ずプラスに転じると考えています」と答えている。現在は「テレワーク応援 日帰りプラン」を午前8時から午後7時までで4500円から、「テレワーク応援 5日連続プラン」を4泊5日で1万5000円から展開中だ。「コロナ禍において、新たなホテルの活用方法を提案することで、これまでにない需要を取り込むことも目的としている」(広報担当者)とのことで、今後のマーケティング戦略にも生かしているとみられる。

訪日外国人は前年比99.9%減

 ホテル業界にとって深刻なのが、近年国内の観光業界を賑わせていた訪日外国人旅行者の減少だ。その数は前年比99.9%減で、0に近いような数字だ。国内では新型コロナウイルスの流行は落ち着きを見せているものの、世界規模でみれば収束には程遠い。そのため、国内旅行者数の回復は望めても、海外旅行者に関してはまだまだ厳しいのが現状だ。

 この「インバウンド」とも呼ばれる訪日旅行者の需要は、日本の総需要の約2割を占めており、この2割に関しては当面も期待できないとみられる。日本の観光業を現状で「元通り」とするには、この2割の需要減を国内のみで補う必要がある。

phot アパホテルは6月末まで1人1泊2500円のプランを提供していた(プレスリリースより)

1室当たりの売上は大きく減少

 また、今夏に開催予定だった、東京オリンピックが1年延期された影響はどうなのだろうか。現在来年の東京五輪の開催方法について議論がされているものの、オリンピックによって海外から訪れる人の数の減少は必至とみられている。

 そのため、「オリンピック特需」そのものも減少することが考えられる。「RevPAR」と呼ばれる、販売可能な客室1室あたりの売上を表す指標は、今年7月と8月に予定通りオリンピックが開催されていた場合、20年8月は前年比27.9%の成長が見込まれていた一方、21年にオリンピックが延期されたことによって、21年8月はプラス27.2%と低い予測値となっている。

 また、1年延期したことで、20年7月はマイナス16.5%、8月はマイナス10.9%で、計マイナス27.4ポイントの予測値となった。20年に予定通りに開催され、21年にオリンピック特需がなくなった場合の予測値は、7月マイナス11.9%、8月マイナス16.7%で計28.6ポイントのマイナスとなった。

 一見すると、今年オリンピックが開催されていたほうが減少幅が大きいように見えるが、この数値はあくまで前年比であり、本来の21年の予測値は20年のオリンピックで大きく需要が伸びてからの下落を前提としている数値だ。そのため、RevPARの絶対値としては大きく下落するものとみられている。ただしそれでも、2019年のラグビーワールドカップと同程度のRevPAR上昇は見込まれている。

phot 販売可能な客室1室あたりの売上を表す指標「RevPAR」は、今年7月と8月に予定通りオリンピックが開催されていた場合、20年8月は前年比27.9%の成長が見込まれていた。一方、21年にオリンピックが延期されたことによって、21年8月はプラス27.2%と低い予測値となっている(STR2020作成、PwCコンサルティング「COVID19:ホテル業界への影響」より)
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