コロナ直撃の東海道新幹線 消毒、換気に続くJR東海の対策は「薬師如来」大型連休中には利用者数が対前年6%に(1/4 ページ)

» 2020年06月29日 16時00分 公開
[村田和子ITmedia]

 3月末、東海道新幹線の車中では、「車両に乗客は数名」という異様な光景が広がっていた。ビジネス客に加え、国内外の旅行者、進学・就職など新天地へと向かう人々で賑わうはずの駅も閑散とし、予定されていた臨時列車も運休となった。

photo 東海道新幹線の大型連休中の利用者数は、前年のわずか6%にとどまった(4月29日撮影、写真提供:ロイター)

意気揚々と迎えた令和2年 一変したのは……

 令和2年の年明けには、東京オリンピック・パラリンピックの開催、それに向けた商業施設やホテルの開業ラッシュと、観光業はどの業界よりも意気揚々と明るい未来を思い描いていたに違いない。雲行きが怪しくなったのは、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に、中国が1月27日より「海外への団体旅行の中止」を発表したことに始まる。

 昨夏より日韓関係の悪化をうけて韓国からの旅行者は減少、その穴を埋めて旅行者が増えていたのが中国だった。2019年には950万人を超え過去最高、国別の訪日外国者数でトップだっただけに、この影響は日本の観光業に大きな打撃となることを意味する。

photo 2019年の訪日外国人の数で中国は950万人を超え過去最高だった。韓国、台湾、香港、タイと続いた(日本政府観光局のWebサイトより)

 日本政府観光局の発表によると、観光目的の訪日外客数は、20年1月には、228万7755人(対前年2.4%減)と、ほぼ例年並みだった。それが2月には89万8976人(対前年 61.6%減)と半数以下に落ち込み、3月に至っては、新型コロナウイルスの世界への拡大を受け、1万9645人(対前年95%減)まで減少。4月以降は観光目的の入国は皆無という鎖国状態になっている。訪日旅行者の増加を背景に急伸した企業を中心に、多くの観光事業者が窮地に陥ることになる。

 特に国内の延べ宿泊者数は、4月には1079万人泊(対前年:76.8%減)と大幅に減少。5月以降は未発表だが厳しい数字がでることが予想される。ただ、全体の宿泊者数に占める、訪日外国人の割合は、もともと全体の2割程度にすぎない。観光業がここまで疲弊した真の要因は、国内の需要減少であり、言わずもがな引き金は、4月7日に7都府県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県、福岡県)へ出された「緊急事態宣言」だ。翌週16日には全国へと広がり、コロナ禍はより深刻に、そして緊急事態宣言も、当初の1カ月を超え長期化することとなる。

photo 国内の延べ宿泊泊者数は、4月には1079万人泊(対前年:76.8%減)と大幅に減少した。コロナが報道された2月頃から対前年比が急速に落ち込んでいることが分かる(観光庁のWebサイトより)

東海道新幹線の利用者が対前年のわずか6%だったGW

 「大型連休には事態が落ち着き、営業できれば……」そんな観光事業者の切実な願いは届かず、ゴールデンウィークも外出自粛要請は継続。「ステイホーム」が合言葉になった。行楽目的の宿泊施設には休業要請ができる旨が各都道府県あてに通達され、例えば東海道新幹線沿線の京都でも、ホテルは休業、多くの店のシャッターは降ろされ、オーバーツーリズムが問題となったかつての賑わいが信じられないほどに、街から人影が消えた。

 結果、東海道新幹線の大型連休中の利用者数は、前年のわずか6%にとどまった。

photo 京都・祇園をマスク着用で歩く男性(3月25日撮影、写真提供:ロイター)

 段階的な自粛緩和を経て、6月に入り東海道新幹線の利用者数は対前年22%まで戻したが、「首都圏との往来は慎重に」という要請は継続し厳しい状況は続く。ようやく6月19日に移動制限が緩和され、全国での移動が自由になり、コロナ禍の出口も、かすかだが見えてきた。観光業の復興への歩みはこれからが本番となる。

 参考までにJALの発表によると、飛行機の利用者数も、6月中旬には対前年20%程度まで回復、東海道新幹線と同様の動きを見せている。今後は7月前半には対前年40%程度、後半は50%程度まで利用者が戻ると予測、運航率も7月中旬には50%強程度まで引き上げることを発表している。

photo JALの減便対応概要一覧(同社プレスリリースより)
photo マスク・フェイスガードを着用したJALスタッフ
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