フランス・パリに拠点を置き、110カ国で5700以上のホテルを展開する世界的ホテルチェーン「アコー」。日本では「メルキュール」などのブランドを展開している。このアコーが旧大和リゾートの施設を運営受託する形で4月、22施設・約6500室を「グランドメルキュール」「メルキュール」などにリブランドした。
これまで同社は国内では「メルキュール」ブランドを中心に、都市型のシティーホテルを展開してきた。ただ今回リブランドした施設の大半はリゾートホテルであり、これまでのシティーホテルとはコンセプトが異なる。
4月にリブランドオープンしたホテルの多くは「オールインクルーシブ」プランを提供している。オールインクルーシブとは、宿泊料金に夕朝食料金だけでなく、食事時の飲み物代や、ラウンジでのドリンクやつまみ、菓子なども含んだプランのことだ。
なぜ、アコーは日本でリゾートホテル運営に乗り出したのか。その狙いを、アコーのアジア支社であるアコーアジアのガース・シモンズCEOと、日本法人のアコージャパン、ディーン・ダニエルズ社長に聞いた。
――アコーは、これまで日本では「メルキュール」のブランド名で都市型ホテルを中心に展開してきました。それが旧大和リゾートのホテルを運営受託する形でリゾートホテルの運営に身を乗り出した形になります。どういった狙いがあったのでしょうか。
ダニエルズ: これまで当社では、日本で24軒のホテルを展開していたのですが、この多くが都市型のホテルでした。リゾート系のホテルはあまりなかったわけですね。ところが昨今、過去最高の外国人旅行者が日本を訪れるようになり、「オーバーツーリズム」の問題も国内各所で起こっています。こういった問題に対し、地方の魅力をもっと発信し、旅行者を分散したい狙いがありました。
もちろん、今回リブランドした22施設には以前よりお越しくださっていたお客さまもいますので、今までの国内旅行者も大事にしています。私も日本に来て長いですが、日本の素晴らしさは東京、大阪、京都だけではなく、地方に多くの魅力があります。海外からのインバウンド旅行者に、地方の良さや、世界遺産を通じて、もっと日本の歴史と文化を知ってほしい思いがあります。
――リゾートホテルに進出する過程で、旧大和リゾートの施設をリブランドする形になりました。旧大和リゾートのホテルの分布が、外国人旅行者に新たに観光資源として訴求できる地域に重なっていたということなのでしょうか。
ダニエルズ: そうですね。立地の良さや、働くスタッフがそのまま活躍できる点で旧大和リゾートは適していました。こうした要因に加え、当社でさまざまなマーケティング分析をしていくうちに、旧大和リゾートのリブランドはまたとないチャンスだと思いました。元からの物件や人材のパフォーマンスをより良くしていける確信が、私たちにはあります。
――コロナ禍が明け、過去最高の外国人旅行者が来日しています。コンシューマーだけでなく、アコーのようにホテルチェーンも日本への関心を高めているように思います。なぜ、世界の観光業の中で日本の人気がここまで高まっているのでしょうか。
ダニエルズ: 実はアンケート調査などでは、コロナ禍の時から日本は注目されていました。「コロナ禍が明けたらどこの国に行きたいか」というアンケートを各国で取ると、日本が1位や2位になることが多くありました。ですから、日本市場の可能性は以前からあったと考えます。
日本の魅力は、清潔感があるところや、食・文化の質の高さにあります。以前はアジア圏の観光客が多い傾向にあり、2019年にさかのぼると中国が全体の3割を占めていました。ところがコロナが明けた今では、中国以外の国からの観光客数が伸びています。特に欧米からの観光客数が倍ほどに増えています。
――人気の理由として、円安の要因はどの程度あるのでしょうか。
ダニエルズ: 円安の要因はもちろんあると思います。しかし先述のアンケート調査の通り、円安になる前から日本の人気は高かったので、円安は副次的な要因だと思います。為替レート以前に、やはり「日本に行きたい」という旅行者の気持ちがまず強いのだと考えています。
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