「いきなり!ステーキ」は本当に敗北したのか? 「やっぱりステーキ」と“コスパ神話”の行方スピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2026年02月18日 09時45分 公開
[窪田順生ITmedia]

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スピン経済の歩き方:

 日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。

 本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。

 「値上げ」した企業が「客離れ」を起こして衰退する一方、厳しい環境の中でも「コスパ」を守った企業は顧客から支持され、成長を続ける――。

 経済系のニュースでは、まさに「ド定番」ともいうべきサクセスストーリーではないだろうか。

 高品質な商品やサービスを安く提供することが「商売の基本」であり、それを続けることが「企業努力」だと、さまざまな業界で「常識」とされているからだ。

 この分かりやすいケースとして、外食チェーンの世界で注目を浴びたのは「いきなり!ステーキ」VS「溶岩焼きステーキ やっぱりステーキ」(以下、やっぱりステーキ)のステーキ戦争である。

「いきなり!ステーキ」VS「やっぱりステーキ」のステーキ戦争(出典:ゲッティイメージズ)

 2013年、東京・銀座にオープンした「いきなり!ステーキ」は、ペッパーランチ創業者の一瀬邦夫氏が「良質な肉を、手頃な価格で提供する」という理念に基づいて展開し、低価格や立ち食いスタイルが受けて台頭した。全国で約500店舗を展開するまでになったが、原材料の高騰によるたび重なる値上げなどで「客離れ」が起き、現在は約170店舗まで縮小した。

 一方、2015年に沖縄・那覇でオープンした「やっぱりステーキ」は当初は「パクリ商法」などと指摘されたが、溶岩プレート上で客自身が焼き加減を調整できる仕組みや、食券機の導入など徹底した「省人化戦略」でコストを抑え、「コスパ最強」と評判を呼び、ファンを増やした。SNSとマス広告を組み合わせたPR戦略も功を奏し、店舗数も右肩上がりで増加。多くのメディアから「やっぱりステーキの快進撃が止まらない」などと称賛を浴びた。

 コスパを軽視した「いきなり!ステーキ」は、顧客にそっぽを向かれ閉店ラッシュに。一方、コスパを維持した「やっぱりステーキ」は顧客に支持され、急成長した。日本では「安さ」を提供できない者は苦境に立たされるという教訓として、外食業界では今も語り継がれている事例だ。

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