日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。
地方にイオンモールができると、「にぎわい」が生まれる一方で「衰退」にも拍車がかかる。そんなシビアな現実を突き付けられた街がある。
長野県松本市だ。
北アルプスや上高地という自然に囲まれ、国宝・松本城でも知られるこの地方都市に「イオンモール松本」ができたのは2017年のことだった。
170の専門店の中には県内初出店となる「H&M」などもあり、若者から家族連れまで幅広い層が訪れて、すぐに「街のにぎわいの中心地」となった。筆者も開業後しばらくして訪れたことがあるが、あまりにも館内が混雑していて驚いたものだ。
だが、このイオンモール周辺エリアの人口や、人々の消費能力には「限度」があるので、イオンモールがにぎわえばにぎわうほど、同一商圏内の商業施設は閑古鳥が鳴く。それでもなんとか頑張ってきたが、ここにきて続々と撤退や廃業に追い込まれている。
まず2025年1月13日、「イトーヨーカドー南松本店」が閉店。2月28日には松本の流行発信地として若者に愛された「松本PARCO」も40年の歴史に幕を閉じた。そして3月末日にはJR松本駅前のデパート「井上百貨店」も営業を終了する。1885年(明治18年)に呉服店として創業してから松本の人々に長く愛されてきたランドマークが消えることを惜しむ声も多い。
地元紙『信濃毎日新聞』によれば、イオンモール松本の周辺商店街や住宅街は空き店舗や空き家が増え続けているそうで、「にぎわい」は施設外まで波及していないようだ。
さて、このような話を聞くと、地域の全てを吸い込むイオンモールのパワーに恐怖さえ感じる人も多いのではないか。ただ、実はそんなイオンモールでさえ「安泰」とは言い難いのが今の日本だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング