「いきなり!」凋落の一方で規模拡大の「やっぱりステーキ」 明暗分かれた納得の理由(3/3 ページ)

» 2024年06月08日 05時00分 公開
[山口伸ITmedia]
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オペレーションの効率化や、出店方針がポイント

 やっぱりステーキが安さを実現できる背景には、徹底した効率化がある。

 肉が冷めにくい溶岩プレート上で焼き、一律レアで提供しているのは特徴といえるだろう。焼き加減の調節は客が自分のプレートで行うため、職人を配置する必要もない。対するいきなり!ステーキでは、レア・ミディアム・ウェルダンというように焼き加減の調節を受け付けているため、シェフは一定の熟練度が求められる。その他、やっぱりステーキでは食券機やタブレットの導入により、省人化を進めている。人件費率は通常の飲食店より10ポイントほど低く、20%を下回るという。

 居抜き物件の活用も、経費削減をもたらしている。同社ではコロナ禍で閉店した飲食店や居酒屋などの旧店舗を活用。市街地では大通りから外れた道沿いに出店することもあり、家賃比率を下げているという。業界平均は7〜10%とされるが、やっぱりステーキでは5%を下回る。一方、外食産業が活況を呈するアフターコロナでは居抜き物件の活用が難しくなっているのか、ここ1年の店舗数は横ばいで推移している。

1000円台のステーキ業態は今後拡大していく?

 やっぱりステーキと似た業態として、焼肉チェーンなどを運営するあみやき亭が近年注力している「感動の肉と米」が店舗数を増やしている。ご飯食べ放題が付いたステーキセットを1000円台で提供しているのが特徴で、中部や関東に32店舗を展開する。いきなり!ステーキおよびやっぱりステーキと同様に、高回転率で運営する業態である。現在はロードサイドがメインだが、都内では北千住と新橋の“駅チカ”に店を構え、都心進出の動きもみられる。あみやき亭は今期、同業態の出店を強化する方針だ。

 以前の記事『いきなり!ステーキが、名物「オーダーカット」を廃止していた! ピークから5年、経営再建の現在を探る』でも述べたように、いきなり!ステーキが縮小した背景には消費者の間でそもそもステーキ店の利用需要が低いことが関係している。

 月1回以上の頻度でステーキ店を利用するのは、消費者全体の1割しかいないという調査データもある。しかし、客単価を2000円以下に抑えられれば、男性客を中心に需要を創出できる可能性もある。物価高で1000円超えのラーメンも見られるようになった現在、1000円台メニューの割高感が低くなっているのも追い風だ。いきなり!ステーキの退店によって生じた空白を埋める形で今後、やっぱりステーキのような1000円台のステーキ業態が増えていくのかもしれない。

赤身ステーキ
ハンバーグ
イチボステーキ
店内の様子(出所:プレスリリース)

著者プロフィール

山口伸

経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_


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