前述した通り、同チェーンは長崎ちゃんぽんでは一強状態であり、もともと極端な安売りで集客していたわけではない。また、ラーメン・うどん各社でも近年は値上げが相次いでいる。リンガーハットは「長崎ちゃんぽん市場」ではほぼ独占している立場であり、値上げに強いはずなのに、なぜ値上げ耐性が弱いのだろうか。
考えられる主な要因はその立地にある。
前述の通り、リンガーハットは約6割がSC内のフードコートだ。当初の強みとしていたロードサイドでは、ちゃんぽんを目当てに訪れる客が多いが、フードコートにおいて消費者は入店してから選ぶ傾向にある。すき家などリーズナブルな外食各社もフードコート出店を強化する昨今、リンガーハットのお得感はかなり劣後すると考えられる。
クロス・マーケティングの調査結果では、フードコートのイメージとして「安く食事ができる」(24.4%)が「気軽に入れる」(32.5%)に次ぐ2位に上がっており、フードコートにおいて安さが重要な因子であると考えると、リンガーハットの苦戦は必然といえるだろう。
そもそもリンガーハットが出店エリアをフードコートへシフトしたきっかけは、リーマンショックにある。同社は2009年2月期の営業利益が前年比7割減となる1.6億円、最終利益に至っては24.3億円の赤字となった。その後、業績を回復させるべく出店費用が路面店の半分程度で済むフードコートへとシフトしていった。その結果、2017年2月期には営業利益が当時過去最高の32.8億円を記録した。
ただ、見かけの業績は改善していたものの、客数減少の兆しは見えていた。2010年代における既存店客数について、前年比推移でマイナスが目立っていたのである。たび重なる値上げが足を引っ張っていたとみられる。筆者の所感だが、リンガーハットのCMは国産野菜や具だくさんを訴求するものの、丸亀製麺のように品質やこだわりを訴求する印象は少ない。質の高さを伝えるような宣伝をしていれば、値上げ許容度はもう少し高まっていたかもしれない。
なお今期のリンガーハット既存店業績について、同社は客単価8.5%増、売上高4.7%増を見込む。一方、客数は値上げによる影響を考慮してか3.5%減の予想だ。新規の出店計画はわずか11店舗である点も気になる。とはいえ第1四半期で利益は回復しつつあり、光明は見えている。再攻勢をかけるならば、今後はフードコート偏重の姿勢を改めることがポイントになるだろう。
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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