現在、40代を中心とした即戦力のミドル層採用が活発化しています。背景にはマーケットの成熟化を受けた既存事業の頭打ちに加え、IT化・デジタル化の加速、さらにはVUCA時代における市場ニーズの急激な変化などにより、新規事業開発に乗り出す企業が増えていることがあります。そしてこの動きは、新型コロナ感染拡大後に停滞した採用活動が、その後急速な回復を見せる中で、加速し続けています。
結果、自社にはない知見や経験、スキルを組織外から獲得するために、経験豊富なミドル層の採用、つまり即戦力となり得る人材の採用を強化する企業が増えています。同時に、労働力不足が深刻化し続けていることや、転職意向が定まりきっていない応募者も増加しているため、専門性やスキルを有する人材の企業間の獲得競争は白熱。選考判断の難度は高まり続けており、ミドル層の採用に苦戦する企業は多く見受けられます。
前編となる今回は、ミドル層採用がうまくいかない要因を採用成功ケースから探るとともに、企業のミドル層採用におけるポイントを解説します。
物流業界のA社は新規事業開発に取り組むことになり、それを牽(けん)引できるミドル層の採用を進めていました。以下の必須経験に加え、社内では、メンバー育成もできる人材を求める声が上がっていました。
A社の書類選考に応募した転職希望者のBさんは、働き方改善、特に残業時間を減らすことを目的に転職活動を行っていました。
A社ではBさんには「プロジェクトマネジメント経験」「マネジメント経験」「マーケティング・市場調査の経験」がないことが懸念材料と判断され、書類選考で一時は見送りの決定がなされました。しかしながら、採用が急務であったことに加え、転職エージェントから職務経歴書では表現しきれていない業務上の工夫やカルチャーフィットの観点からの助言もあり、A社はBさんと面接してみることにしました。
面接を通じA社は、Bさんがいまだにデジタル化されていない非効率な作業により、無駄な残業が発生している現職で、情報をデータベース化したり、マクロを組み自動計算したりと、高い生産性意識を持ち、自らの業務に対して工夫を重ねてきたことを知りました。
またBさんは、長年にわたり事業開発に従事してきた知見やスキルを、自発的にメンバーに教える取り組みを行っていました。さらに深堀りしてみると、メンバー育成にも興味があるとのことでした。
最終的には以下の2点が決め手となり、A社は面接を通じ、Bさんの採用を決定。特にA社は、求める経験以上にBさんの仕事に向き合う姿勢が社風に合うと判断しました。
ここからは、本採用成功ケースをおさえた上で、企業のミドル層採用のポイントを解説していきます。
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