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1年後、生成AIは採用市場をこう変えている──あるHRテックベンダーの予想(1/2 ページ)

» 2024年05月30日 07時00分 公開
[小林可奈ITmedia]

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生成AIでデジタル戦略はこう変わる AI研究者が語る「一歩先の未来」

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【概要】元・東京大学松尾研究室、今井翔太氏が登壇。
生成AIは人類史上最大級の技術革命である。ただし現状、生成AI技術のあまりの発展の速さは、むしろ企業での活用を妨げている感すらある。AI研究者の視点から語る、生成AI×デジタル戦略の未来とは――。

 メディアで取り沙汰される「2024年問題」含め、あらゆる業界・職種で人材不足が叫ばれている。対処法として生成AIの活用が期待されているが、国内の生成AIの活用率は、どの調査結果を見ても10%前後にとどまっている。

 AI専門メディア「AINOW」編集長のほか、生成AI活用普及協会で協議員を務める小澤健祐氏は「対話型のシステム、あるいは答えを教えてくれるチャットbotと思われているため活用例が増えない」と指摘する。

 今回はHR領域に特化した生成AIの活用法を取材した。人事は業務の中でどのように生成AIを活用していくべきか。採用プラットフォームを提供するThinkingsの佐藤邦彦CHROと小澤氏が登壇した「HR領域における『AI活用』最新トレンドと展望の発表会」の内容をレポートしていく。

生成AIは、採用市場をどう変える?

photo 左から生成AI活用普及協会 協議員の小澤健祐氏、Thinkings CHROの佐藤邦彦氏

 生成AIの本質は対話ではなく、あくまでデータを基に最適な文章や動画、イラストなどを生成できる点にある。「ネット検索の延長のように捉えてしまうと、HR領域での活用は進まない」(小澤氏)

 生成AI活用を、DX戦略の一部に位置付ける企業は少なくない。企業のDXは「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」に分けられると小澤氏は話す。

 例えばアナログデータをデジタル化するのはデジタイゼーション、デジタルデータを活用して新たな付加価値を生み出すのはデジタライゼーションに当たる。

 「多くの企業では、そもそもデジタイゼーションができていないのにいきなり生成AIを使おうとしている。

 これまでのツールは表形式やCSVなどコンピュータが処理しやすいデータしか扱えなかったが、生成AIの登場でテキストのみでなく画像や音声を含む非構造化データを扱えるようになった。HR領域におけるインパクトはここだ。

 例えば、候補者の志望動機や職務経歴書から、業界や経験年数だけでなく『どんな経験があるのか』が分かるようになる。また近年、注目が集まる採用広報の分野においては、もっとデジタルデータを貯めながらフロー管理し、KPIに落とし込みより良い人にアプローチできるようになるだろう」(小澤氏)

 膨大なデータを扱える生成AIの登場で、独自情報、一次情報の重要性が高まると小澤氏は指摘する。その波は、採用市場にも及びそうだ。

 例えば現在、転職を考える人はまず検索エンジン経由で「○○(職種)が転職する際、おすすめの職種△選」などのキュレーションメディアの記事を閲覧することがある。ユーザーはそこから具体的な仕事の情報や、各社の求人へと遷移して情報収集する。三次情報にあたるキュレーションメディアの記事から二次情報のSEO記事に移り、そして求人の一次情報にたどり着く──といったように、情報収集には多次元の構造がある。

 生成AIの登場で、一次情報をまとめているだけのSEO記事や、高い付加価値を提供できていない転職エージェントの重要性は評価されなくなると、小澤氏は見ている。

 「人事も、独自の一次情報を持っていることが大事になる。インターネットに載っていない情報に価値が生まれることになる」(小澤氏)

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