睡眠の質向上、瞑想のトレーニング、相談窓口の設置などもきっかけづくりとしては効果的だが、このような「点」での対策では不十分だ。全体としての構成を考え、不調者へのケアといった事後対処に加え、根本対策としての未然防止策まで考慮した「面」の対策を取る必要がある。
では、具体的にどうしていくべきだろうか。ここではコンサルティングファーム マッキンゼーが提唱する「インフルエンスモデル」というフレームワークを紹介したい。新しい思考・行動を浸透させるには「意義・目的への腹落ち、ロールモデルの構築、ツール・仕組みの整備、スキルと人材の開発」がそろってこそ、組織が変わる、というモデルのことだ。これを職場のメンタルヘルスに当てはめるとどうなるだろうか。
【意義・目的への腹落ち】
まずは、現場は納得できる理由や意義がないと、思考や行動を簡単には変えない。「また上が勝手にやっている」という受け取り方をされないように、なぜメンタルヘルスやエンゲージメントに関する取り組みが優先度が高いのか、どれだけトップもコミットしているのか、と経営陣からの一貫したメッセージが必要だ。
【ロールモデルの構築】
ストーリーにとどまらず、実際に経営陣や上司や同僚が取り組む姿を見せることも重要だ。特に、経営陣はストレス環境に強い、メンタルが強い人たちと思われがちである。そういった方たちのキャリアの中での困難をどう乗り越えてきたかという話は、社員の心に強く響くだろう。
【ツール・仕組みの整備】
実践の意味では、効果的な仕組み作りが欠かせない。定期的なコンディションのチェックやストレスマネジメント研修、相談窓口の設置、復職者ケアのプロセスづくりなどが必要だ。これにより、社員はいつでもサポートを受けられる環境が整う。もし労働時間や特定の人間関係が不調者発生の起因であるなら、それらへの抜本的な対策を取ることも必要だろう。
【スキルと人材の開発】
人事労務担当だけでなく、管理職は部下のケアや不調のサインを見抜くスキルをつけることも求められる。また、管理職だけでなく社員個人のストレス対処力を向上させるためのトレーニングも有効手段の1つだ。
ある企業では、トップがコミットし、これらの総合的な打ち手の実践により、1年でメンタル不調による休職者が半減する結果につながっている。
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