こう聞くと、日本のテレビでTemuの広告を見る回数はさらに増えることになりそうだ。もっとも、この状況は日本だけではない。米国でも、TemuはCMで一気にユーザーを増やしたことで知られていて、CMを打ちまくることがビジネスモデルになっている。
米国において、1年で最も広告料が高いと言われるのは、アメリカンフットボールの優勝決定戦「スーパーボウル」で流れるCMスポットだ。企業が30秒のCMを流すのに、平均700万ドル(約10億円、1ドル145円換算)の広告費を払う必要がある。そして、2024年2月に開催されたスーパーボウルではTemuのCMが登場したことが大きな物議になった。
Temuはスーパーボウルで30秒CMを4本も放送した。さらにスーパーボウルに合わせたキャンペーンのギフトやクーポンで1500万ドル(約22億円、同)を使ったと報じられている。その効果は絶大で、アプリのダウンロード数が34%増加した。
ちなみにCMや格安商品が話題になったことで、あらためて商品のクオリティーや顧客満足度の低さがクローズアップされることにもなった。
Temuの広告重視戦略はインフルエンサーとのコラボからも読み取れる。YouTubeなどでもインフルエンサーとのコラボを狙っており、日本でもあちこちにコラボ要請のメールを送っていることが分かっている。とにかく露出を増やして、オンラインサイトやアプリにアクセスしてもらおうという狙いだ。
そんなTemuだが、確かに怪しいところもある。Temuの名称は「TEAM UP、PRICE DOWN(チームアップ、プライスダウン)」を意味し、本部はボストンということになっているが、その実態は中国系企業だ。Temuの運営元である親会社の「PDDホールディングス」も中国に拠点を置く正真正銘の中国企業。PDDは、2023年に本社の登録住所を法人税が低く、タックスヘイブンとして知られるアイルランドのダブリンに移しているが、節税だけでなく、中国色を消そうとしたとの批判もある。
PDDは中国国内で「Pinduoduo」というショッピングサイトを運営し、コロナ禍で外出が禁止されていた時に、生産者と消費者を結ぶビジネスを始めて大成功した。中国ネット大手の騰訊控股(テンセント)の支援を受けながら中国で効果的に広告を展開。今は激安サイトやアプリを運営し、Temuの姉妹サイトになっている。
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