攻める総務

総務の「帰宅困難者対策」必要17品リスト 備蓄しても“見落としがち”なものとは?「総務」から会社を変える(2/2 ページ)

» 2024年08月21日 12時30分 公開
[豊田健一ITmedia]
前のページへ 1|2       

防災備蓄品を再確認

 いま一度、防災備蓄品に必要なものを確認しよう。最低でも3日間は会社にとどまれるようにするには、以下の防災備品リストを参考にしてほしい。

品目 必要量 備考
応急手当セット 一式×フロア数 切り傷・やけど・骨折に対応する道具。三角巾・包帯・滅菌ガーゼ・傷パッドなどのセットと応急手当てマニュアル。
救助セット 一式×フロア数 避難経路の確保や救助活動に必要なバール、ハンマー、ジャッキ、ロープ、作業用の革手袋など。
消火器 数本×フロア数 ビルの設備が動作しない場合に備え、最低限の消火器を準備しておくことが望ましい。
軍手 1組×人数 避難時や救助活動時、ガレキなどの撤去時に使用。また冬季は防寒具としても活用できる。
懐中電灯 1組×人数 夜間の停電時には明かりがないと行動できない。特に避難時には必須。電池の持ちが長いLEDが良い。
ハザードマップ 1組×人数 避難時に必須、コピーでもかまわないので会社周辺のハザードマップを配布する。
ヘルメット 1組×人数 避難時や救助活動時にあれば役立つ。
非常用トイレ 7回×3日×人数 便器にかぶせる用便袋、消臭、抗菌効果の高い凝固剤、使用後の袋をまとめられる大袋のセットが良い。
保存水 3L×3日×人数 全てを備蓄専用にせず、一部は平時から利用できる小型ボトルやお茶にして、使った分だけ足しても良い。
非加熱食品 3食×3日×人数 そのまま食べられる非常食(ビスケットやチョコバー)、乾パンなど加熱不要な主食類を準備する。
加熱食品 3食×3日×人数 お湯で戻すアルファ米、レトルトカレー類、インスタント食品などを追加すると食事の満足度が高まる。
加熱道具 1食×3日×人数 水を入れるだけで使える発熱剤、またはカセットコンロなどを準備しておくと役立つ。
毛布 1枚×人数 圧縮収納された毛布を準備、予算がなければエマージェンシーブランケットでも代用できる。
睡眠グッズ 1セット×人数 予算が許せば、エアマツト、エア枕、アイマスクなどを追加、泊まり込みの作業要員分は確保すべき。
ウェットティッシュ 1個×人数 傷の手当てや衛生管理に必要。トイレ後や食事前に手指を拭くことで感染症予防、水の節約にもなる。
圧縮タオル 1枚×人数 タオルとしての利用のほか、ケガをした際の手当てに使うこともできる。
マスク 1枚×3日×人数 地震直後の粉塵(じん)、乾燥や感染症の予防のためにマスク着用が望ましい。
電池充電器 1個×人数 スマートフォンや携帯電話を充電できる乾電池タイプの充電器を準備。
予備電池 1組×人数 電池が必要なグッズを準備した際には必ず入れておく。

 防災備蓄品となると、つい食料のことばかり考えてしまいがちだが、特に重要なのが非常用トイレの確保だ。人は仮に十分な水分補給をできていなくとも、用を足したくなるものだ。時間とともにその量は拡大していく。

 衛生管理が十分でないと、夏場は臭いの問題もあり、居室にとどまることが難しくなるケースもある。水と食料、トイレも同量の準備が必要だ。「1日当たり7回分×従業員数×3日分」の用意と「仮復旧要員数×1週間分」程度は見ておくことだ。

見落としがちなのが「配布方法」

photo (提供:ゲッティイメージズ)

 企業によって、防災備蓄品の管理方法はさまざまだ。段ボールの箱のまま、オフィスの奥にまるで隠すかのように置かれていたり、防災備蓄品との目印はあるものの、段ボール箱のまま積まれていたり。

 緊急時、社員がパニックになっている状態で、もし防災担当の総務メンバーが不在だったら、どのように配布すべきか誰も分からないのではないだろうか。最低限、配布の仕方のマニュアルもあわせて設置しておくことが望ましい。

 企業によっては、1人分ずつ袋に小分けしてあるケースもある。各自が持っていけば事足りるため、利便性が高い。昨今は固定席を持たないフリーアドレス制のオフィスも多い。各自の机に常備とはいかないので「目に付きやすく、たどり着くのに障壁がない適切な場所」に、小分けしておくのが良いだろう。

 緊急時はさまざまな準備も、想定通りには機能しないものだ。防災担当者が不在であるケースに備え「社員ならば誰もが、具体的に取るべき対応がすぐに分かる」状態に整えておきたい。

著者プロフィール・豊田健一(とよだけんいち)

株式会社月刊総務 代表取締役社長/戦略総務研究所 所長/(一社)FOSC 代表理事/(一社)ワークDX推進機構 理事/ワークフロー総研 フェロー

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)FOSC代表理事、(一社)ワークDX推進機構の理事、ワークフロー総研フェローとして、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。

著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)『マンガでやさしくわかる総務の仕事』『経営を強くする戦略総務』


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.