店舗運営でもこれまでのこだわりを覆している。吉野家は昔ながらの対面接客にこだわり、注文方式のDXを進めてこなかった。「こんにちは」「ありがとうございました」といった細かなやり取りを大切にしたいからだという。現在でもはっきりと券売機を導入しない姿勢をアピールしているほどだ。しかし効率化の波に抗えなかったのが、近年ではタブレットの導入を進めている。
また、セルフレジを置くC&C(クッキング&コンフォート)店舗を展開。従来のコの字型テーブルではなく、ファストフード店のような店舗を増やしている。松屋のように番号を呼ばれたらカウンターに取りに行くシステムだ。
C&C店舗は女性客をターゲットにしているのかファミレスやカフェのようにテーブル席を多く設置し、おしゃれな内装を施している。野菜の乗った「牛丼ON野菜」といったメニューも提供する。C&C店舗では女性客比率が従来店の2割から3割に増える効果もあったという。
また、新規出店の軸としてイートインスペースを置かないテークアウト専門店の出店を進めており、同店舗では女性客比率が5割にのぼるという。業界の中で女性客を苦手としてきた吉野家だが、今後は取り込んでいく方針だ。
松屋は近年、外国料理で集客する動きがみられる。その筆頭となったのが、2020年1月に全国販売を始めた「シュクメルリ鍋定食」だ。シュクメルリは鶏肉をガーリックソースで煮込むジョージアの伝統料理で、松屋での提供はその珍しさとご飯との相性が評価されSNSでも話題となった。その後もいくどか期間限定で復刻販売し、直近では2月に期間限定で販売した。
シュクメルリ鍋定食に味を占めたのか、この4月には「ポーランド風ミエロニィハンバーグ」を発売。ポーランド大使館からの提案がきっかけだという。同商品はハンバーグとウインナーにきのこソースがかかった料理であり、日本のごはんに合うようにソースをアレンジしている。ちなみに「ミエロニィ」とはポーランド語で「ひき肉」という意味だ。
その他、業界でいち早くセルフ式店舗を増やしてきた松屋は近年、複合店へのシフトを進めているのも特徴だ。複合店とは、従来の松屋に、とんかつ業態の「松のや」、カレー業態の「マイカリー食堂」などを加えた店舗形態である。併設店とはいえホールは共通しており、同じ窓口で提供するスタイルをとる。客にとっては1店舗でより多くのメニューを楽しめるメリットがある。
公式Webサイトによると、8月23日時点で併設方式のマイカリー食堂は148店舗あり、松のや業態に関しては400店舗中、半分以上が併設形式である。最近の新規出店情報を見るとほとんどが複合店であることから、商業的にも成功しているのだろう。今後、複合店の店舗数はますます増えていきそうだ。
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値上げラッシュで「ワンコイン」昼食はどうなる? 松屋は500円ランチの提供時間延長、セブンは399円弁当拡充 狙いを探るCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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