「PDCA」はビジネスでは当たり前の業務の流れである。しかし、実は多くの総務の仕事はこの流れにそって考えることすら難しい状況にある。なぜか。業務の成果が定量化されていないからだ。
成果を数値で把握できないと、PDCAのCに当たる「チェック」において、うまくいったのかどうか判断できない。上長や他部門からの「それで、どうだった?」に答えられないし、総務自身でも、自らを評価できないのだ。
このため、Credo 8.「You can’t manage what you don’t measure 測定しないものは管理できない」(参照)では、定量化の重要性を強調している。数値で測定できないと、そもそも現状が把握できない上、先に紹介した改善活動を行ったとしても適切な評価ができないのだ。
総務の仕事は数が少なく、その内容もバラバラ。いわば「多品種少量」であることが多い。レアケースへが発生することが多く、このため履歴も残さず、同様の業務が生じても、その都度ゼロベースで対応することも少なくない。
重要なのは、こうした仕事をどのように分類するかだ。ある程度の余白を持ちながら日々の対応業務を分類していけば、種類別に件数としてカウントできる。そうすれば、傾向が見えてくる。同種のものに対して対策を取っていけば、発生件数の増減が分かり、対応があっているかどうか、評価できるようになる。
さらに、テクノロジーツールの進展によって、既存業務のデジタライゼーションができるようになってきた。デジタライゼーションをすることで、その業務のログが残ることになるので、定量化が可能となり、PDCAが回せるようになる。デジタライゼーションは、可能な限り進めておきたい。
そうなると、次に総務に求められるのが、データ・マネジメントである。さまざまなデータから傾向値を読み取り、問題を発見する。あるいは、現場のアクションがどのようにデータに跳ね返るのか、現場とデータとの相関関係を読み解く。
これができれば、現場に行かずとも状況を読み取り、適切な対処方法を選べるようになる。昨今、製造業で導入されている「デジタル・ツイン」のように、仮想空間で現実世界の改善活動の想定を行うことが、総務の世界でもできるようになるのではないだろうか。
戦略総務とはつまり、会社を変えることだと言われる。先述した改善業務もその一部ではあるが、それは既存業務を変化させることだ。会社を変えるには、新たな施策の導入を検討すべきタイミングもある。
そのためには、総務自らが提案する企画を上司に、そして現場に「買って」もらわないといけない。総務の仕事を一種の“社内営業”でもあると捉え、提案内容を上司に説明し、会社からお金を引き出さないといけない。導入だけにとどまらず、現場に使ってもらう必要もある。この意味で「売れる総務」であることも重要だ。
「売れる総務」になるには、どうしたら良いのだろうか。必要な要素を表したものが、Credo 12.「評判管理と期待管理」(参照)である。
「売れる総務」になるためには、評判を高める必要がある。「総務のAさんの提案することは、いつも現場のためになる」「いつも現場のことを考えて提案してくれるよね」といった信頼を構築する。それすなわち、Aさんが所属する総務部の評判にもつながる。Aさんの企画含めた総務の提案を、上司も現場も買いやすくなる。
評判を高めるために取り組みたいのが、期待管理だ。人がなにかを頼む時、必ず期待を持ってる。「すぐに対応してくれるだろう」「このように対処してほしいという」などさまざまな期待を上回って対応してくれたら、どうだろうか。「えっ、もうやってくれたの!」「えっ、ここまでやってくれたの!」と、感動すら生まれることもある。
依頼する側の期待以上に、早く、より良く対処することで、依頼者の対応者への評価と評判が高まる。「売れる総務」になるには、日々の小さな依頼事項であっても、おろそかにしないことである。
株式会社月刊総務 代表取締役社長/戦略総務研究所 所長/(一社)FOSC 代表理事/(一社)ワークDX推進機構 理事/ワークフロー総研 フェロー
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)FOSC代表理事、(一社)ワークDX推進機構の理事、ワークフロー総研フェローとして、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。
著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務』
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