「若手社員が定着しない」中小企業で30.7% 成果が出ている、効果的な取り組みは?

» 2024年09月30日 10時00分 公開
[ITmedia]

 リクルートが中小・中堅の事業責任者を対象に実施した調査から、若手が定着しない課題や、定着のための効果的な施策が見えてきた。

 中小・中堅企業の事業責任者に「人材の定着状況」を尋ねたところ、正社員については約半数が「定着できている」(「十分に定着できている」「ある程度定着できている」の計)と回答した。マネジメント層の社員をはじめ、ほとんどのカテゴリで同様の回答が得られた。

 一方、若年層の社員は「定着できていない」(「全く定着できていない」「あまり定着できていない」の計)と回答した割合が高く、中小・中堅企業ともに30%を超えた(中小企業:30.7%、中堅企業:32.7%)。

中小・中堅企業の人材定着状況(画像:以下、プレスリリースより)

人材定着に向けて、どのような取り組みが効果的?

 人材の定着に向けて、人事制度の観点では中小・中堅企業ともに「能力や適性に応じた昇進・昇格」「成果や業務内容に応じた人事評価」を挙げた。

 ただし、各項目の実施率については企業規模により差がみられる結果となった。中堅企業は規模が大きい分、制度の整備が進んでおり、「個人の意向・スキルを踏まえた異動・配置の検討」など、より多様な取り組みを実施していることが分かった。

人材定着に向けた取り組み

 人材定着のための取り組みについて、「定着できている群」と「定着できていない群」に分けて調べたところ、中小・中堅企業ともに「業務時間の柔軟化」「時間外労働の削減・休暇の取得推進」「テレワークの導入」といった柔軟な働き方に関連する取り組みで差分が見られた。

 中小企業の実施率を見ると、「業務時間の柔軟化」は、「定着できている群」で24.8%、「定着できていない群」では15.7%にとどまった。同様に「時間外労働の削減・休暇の取得推進」は25.6%と18.1%、「テレワークの導入」も14.1%と9.5%と、それぞれ差が開いた。

中小企業の人材定着に向けた取り組み。「定着できている群」と「定着できていない群」の差分

 中堅企業でも同様の傾向が見られた。「時間外労働の削減・休暇の取得推進」では「定着できている群」で31.5%、「定着できていない群」で19.8%と差が見られた。また、「テレワークの導入」に関しても、「定着できている群」で29.2%に対し、「定着できていない群」では18.5%と差があり、柔軟な働き方の導入が人材の定着に寄与している可能性が明らかになった。

中堅企業の人材定着に向けた取り組み。「定着できている群」と「定着できていない群」の差分

 残業時間と人材定着にも関連性があるようだ。中小企業においては、残業時間が「0〜20時間」の群で人材定着率が最も高く、「十分に定着できている」「ある程度定着できている」と回答した割合が65.2%に達した。

 これに対し、残業時間が「81時間以上」の群ではこの割合が49.2%と低く、残業時間が長いほど定着率が低い傾向が見られた。

 中堅企業でも同様に、残業時間が「0〜20時間」の群で定着率が最も高く、「十分に定着できている」「ある程度定着できている」と回答した割合が60.8%に上った。残業時間が「81時間以上」の群では定着率が33.3%と低く、特に「全く定着できていない」「あまり定着できていない」と答えた割合が42.3%と、他の群に比べて高かった。

残業時間と人材定着の関係

職場環境やコミュニケーション面での影響は?

 職場環境やコミュニケーションと人材定着の関係についても、「定着できている群」と「定着できていない群」の間で、職場環境づくりに関するさまざまな取り組みで大きな差が見られた。

 中小企業で差の大きい項目は「上下関係にとらわれず意見を出しやすい」(定着できている群:70.5%)、「従業員間のコミュニケーションが活発である」(同:63.5%)、「実際の成果や、業務の内容に応じた人事評価を行っている」(同:61.3%)といった取り組みだった。

中小企業における、職場環境と人材定着の関係

 中堅企業では「仕事の内容や範囲が明確である」(定着できている群:57.2%)、「実際の成果や、業務の内容に応じた人事評価を行っている」(同:62.5%)、「経営者が人材の活躍に対して積極的に取り組んでいる」(同:56.1%)といった項目が挙げられた。

中堅企業における、職場環境と人材定着の関係

 人事制度に関連する取り組みでは、中小企業において「定着できている群」と「定着できていない群」で一番差があったものでも9.1ポイント差だったが、職場環境に関する取り組みにおいてはその差は最大26.6ポイントまで広がった。

 リクルートの津田郁氏(HR リサーチセンター センター長)は調査結果を踏まえ、「人材の定着ができている企業群は、業務時間の効率化やテレワークの導入といった働き方に関する制度を推進しているという特徴があります。特に中堅企業では、『成果や業務内容に応じた人事評価』に積極的に取り組んでいます。しかし、こういった制度面の取り組み以上に影響があると思われるのは、職場環境の在り方です。人材の定着ができている企業群には、職場での意見の出しやすさやコミュニケーションが活発であるといった特徴が見られました。若年層の定着という観点では、経営者の積極的な人材活躍への取り組みが効果的であると考えられます」とコメントしている。

 調査は、中小・中堅企業(従業員規模5人以上300人未満を中小企業、300人以上2000人未満を中堅企業と定義)の事業責任者4072人を対象に実施した。期間は3月19〜25日。

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