店舗で販売する商品以外にも、コストコの集客力に貢献しているものがある。例えば入口付近のフードコートは、その安さで人気を博す。ソーダ類のドリンクは1杯80円、ドリンクバースタイルでお代わりも自由だ。ピザは1スライスで350円、ホットドッグはソーダ付きで180円である。各種ソフトクリームは300円と、フードコートには常に行列ができ、にぎわっている。
訪問した新三郷店はガソリンスタンドも併設している。9月21日時点でリッター価格はレギュラー154円、ハイオク165円であり、当時の埼玉県平均と比較して10円以上も安い(筆者調べ)。スタンドでの支払いはキャッシュレスのみで、オイル交換などの設備もなくガソリン販売に特化していることが安さにつながっているという。
コストコは駐車場の広さも特徴で、通常スーパーが100台強であるのに対して、800台以上設置しており、自動車客をメインターゲットとしている。レジ袋は提供しておらず、カートに商品を載せたまま駐車場まで移動し、車に乗せ換えるスタイルが基本のため、圧倒的に安いガソリンスタンドは集客手段の一つになっている。
国内の会員数は600万人以上にのぼり、仮に全員がゴールドスター会員だと仮定すると、年間の収益は290億円となる。フードコートやガソリンスタンドといった付帯設備の維持費は会員費から捻出しているのかもしれない。
商品や付帯設備の安さもさることながら、コストコ人気の背景にはレジャー感もある。通常のスーパーと異なる陳列と規模はそれだけで楽しめる。通常のスーパーのような1人客は少なく、店内は家族連れや夫婦、友人同士などのグループ客が主だった。商品ジャンルも幅広く、ドン・キホーテの「圧縮陳列」から掘り出しものを見つけるような楽しさがある。しかし、実はコストコ店内の商品数は3500点程度。約1万点とされる通常スーパーと比較して3分の1程度しかないのは、やや意外である。
コストコの店舗当たり売上高は年間で180億円以上といわれ、これを平均的な売場面積である1万平米で割ると、180万円になる。この数字は、通常スーパーの平均値である130万円弱と比較して高い。少ない商品でレジャー感をもたらしつつも、スーパーより効率的に販売しているのだ。
コストコは2030年までに国内60店舗以上を目標としている。消費者側から見たポテンシャルは高そうだが、「敷地面積1万5000坪以上」「半径10キロの人口が概ね50万人以上」といった土地条件が足かせとなりそうだ。東京近辺では町田・川崎・新三郷・幕張より都心側には進出できておらず、近年の出店地域も地方が主だ。今後も各県を埋める形で勢力を伸ばしていくのだろう。
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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