全国の自治体で、「コストコ」を誘致する動きが加速している。
コロナ禍以降にオープンしたのは、全国に6店。2020年は木更津倉庫店(千葉県木更津市)。21年には、熊本御船倉庫店(熊本県御船町)、石狩倉庫店(北海道石狩市)、守山倉庫店(名古屋市)。22年には、壬生倉庫店(栃木県壬生町)。23年に明和倉庫店(群馬県明和町)がオープンしたばかりだが、今夏に門真倉庫店(大阪府門真市)も控えている。
24年以降には、三重県亀山市、沖縄県南城市、滋賀県東近江市、山梨県南アルプス市、福岡県小郡市と、続々オープンが決まっている。
会員制のディスカウントストアとして人気が高いコストコは、ロードサイドに倉庫型の大規模店を出店。休日にはしばしば、周辺の道路に大渋滞を引き起こす。周囲に何もない田舎にコストコが出店した後、チェーンのコンビニ、飲食、アパレル、自動車販売、自動車用品などの郊外店が周囲にできる可能性が高い。地域住民にすれば静かに暮らしていたのに、急速な開発で街の風景が変わってしまい、喪失感を持つ人も少なくない。
そのため地域住民から、コストコ出店に対する反対運動が起こることも多い。売り上げを奪われるのを懸念する地元の商店街のみならず、コストコがガソリンを安売りするので、給油のサービスステーションからも反対の声が上がるケースもある。
ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で状況が変わった。公共交通機関を使うより車で移動して、1回の買物でなるべく多くのものを買って、人と接触する機会を減らした方が良いとされた。そうなると、新型コロナと共存する「新しい生活様式」のショッピングに、コストコは非常に適した店と見なされるようになった。
コロナ前に比べても、コストコは日本人の生活により身近になり、追い風が吹いている。
コストコを経営するコストコホールセールジャパン(千葉県木更津市)では、高速道路ICの近く、周囲にイオンモールなどの大規模郊外型ショッピングセンターがない場所を選んで、出店しているように見える。
そうすることで、車の渋滞、地元商店街とのマーケット競合を、極力回避しようと考えている。
一方、誘致に積極的な市町村は、自治体の域内に大規模郊外型ショッピングセンターがなく、隣接した自治体にあるために、地元の商業が衰退しているケースが多い。
住民が隣接する市町村にこぞって買物に行く光景を見続けて、首長をはじめ役所・役場の職員や地元の商工会は苦々しく思っていた。コストコを誘致して一発逆転、商業の発展につなげようとしているように見える。
コストコは全国に32店あるが、無限に出店できるわけでなく、自ずと店舗数の限界がある。すでに近隣に出店していれば、もう1店というわけにもいかない。限られたパイを巡って、誘致合戦が激化している。
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