「今の会社を辞めた場合、次の選択肢(転職・起業など)が見つかる」と考える新人・若手は60.0%に上りました(図表5)。
また、そう思う理由として当てはまるもの2つを選んでもらったところ、「条件に高望みはしておらず、どこかは見つかると思う」という回答は44.1%ありました(図表6)。もちろん、「転職市場が活況である」(29.9%)ことも大きな理由ではありますが、実に半数近くが高望みをしていないことが分かります。
つまり、若手は転職のハードルが低く、転職を人生の一大イベントとは捉えていない人が多いようなのです。この背景には、転職が当たり前となったこと、オンライン面談などが可能になりかつてよりも活動しやすくなったことなどがあると考えられます。
「自分のダメなところや悩みなど何でも話しやすい上司・先輩」については、「仕事ができて的確なアドバイスがもらえそうな人」(30.3%)、「普段から自分の人間性や価値観を認めてくれていると感じる人」(25.5%)、「押し付けがましくなく、自分の話や気持ちを受け止めてくれると感じる人」(24.8%)が上位となりました(図表8)。
相談先として、仕事ができる人が挙がるのは順当でしょう。興味深いのは「人間性や価値観を認めてくれていると感じる人」「自分の話や気持ちを受け止めてくれると感じる人」が上位に来ていることです。若手は、人事や上司・先輩に、まず自分の価値観を認めてほしい、自分の気持ちを受け止めてほしいと思っているのです。彼らの真意を聞き、一旦受け止めることから始めてみてはどうでしょうか。
人事や上司といった立場の皆さんに、こうして新人・若手への理解を深めることをおすすめするのは、新人・若手が「時代の鏡」だとも言えるからです。
例えば、図表8はリクルートマネジメントソリューションズが毎年実施している「新入社員意識調査」の理想の職場・上司像の結果を、2013年と2023年で比較したものです。オレンジ部分は著しく減っている項目で、いずれも10年前には理想と考えられていた要素です。上の世代の皆さんは、これらの項目(鍛えあう・活気がある・情熱・厳しい指導)になじみがあるはずです。反対に、現在はグリーン部分の「個性の尊重・助けあい・一人ひとりへの丁寧な指導・ほめる」が増えています。
この10年間の変化は、キャリア自律、共創型リーダーシップなど、現代の企業組織が向かっている方向と合致しています。また、新たな価値の創造においては、立場や経験に関係なく誰もが意見を言い、一人ひとりの強みや個性を発揮していくことが有効です。
お互いに力を合わせ、本人が持つ特徴に目を向けてメンタルやモチベーションを高める方が、エンゲージメントやパフォーマンスにつながることも確かです。つまり、新人・若手はある意味で、時代の変化を先取りしている存在でもあるのです。
今、新人・若手の特徴をふまえた効果的な育成スタイルが新たに模索され、成果をあげ始めています(図表9)。例えば、相手を否定せずに安心と信頼で自律を引き出す「心理的安全性」が有名です。一人ひとりの個性や多様性を尊重し、自己決定を支援していく方法も進化しています。
それらは新人・若手に限らず、全世代のエンゲージメントやパフォーマンスに対しても重要な要素です。新人・若手の育成から学んだやり方を育成にとどまらず、全社に広めていくことで組織の活性化に寄与することも可能です。ぜひ試行錯誤してみてください。
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