この記事は『漫画ビジネス』(著・菊池健/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。
マンガをつくる上で「組織や体制」は欠かせないわけですが、どのようなことを行っているのでしょうか。作品づくりに対応した組織づくりなどについて、お伝えしていきます。
さて、あらためてここで思い出していただきたいのが、『鬼滅の刃』をつくった週刊少年ジャンプは、1969年の創刊ということです(1968年の「少年ジャンプ」創刊の際は月2回刊で、翌1969年に「週刊少年ジャンプ」として週刊化がスタートした)。
そして『鬼滅の刃』がアニメ化を経て社会現象ともいえる大ヒットとなったのは、2019年頃。ちょうど週刊少年ジャンプが50周年を迎えた前後の看板作品でもあります。
しかし、ただ漫然と50年過ごせばこんなスゴい作品がつくれるというわけではありません。
そもそも50年レーベルが続いたことも大変なことです。
週刊少年ジャンプ編集部と、もちろん、あまたの漫画家たちのたゆまぬ努力や試行錯誤、それを取り巻くマンガ業界や周辺環境があって、週刊少年ジャンプという、ヒット作品を連発する巨大な仕組みが構築されたと筆者は考えます。
1968年の少年ジャンプ創刊時には、先行するサンデー、マガジンに有力な作家とがっちり組まれてしまい、苦肉の策として、新人を一から育てるかたちで作品を作る体制づくりをとりました。すぐに結果を出したかったであろう、黎明期に雑誌を立ち上げたばかりの編集部にとっては、気持ち的にも焦る、大変な遠回りに感じただろうとも思います。
ですがまさに「急がば回れ」の故事の通りで、既存の他社と同じでき上がった漫画家に声をかけて、目先の小さな成功を追いかけるのではなく、自分たちの編集部で一から一緒に頑張った作家と作品をつくる体制は、現在の新人を育て、その新人が大ヒット作品をつくるジャンプの地力をつくったと思います。
その結果、本日現在ジャンプにはあまたの才能が集まっており、その新人作家の才能の巨大なプールが、今から数年後の大ヒット作品出現の根源になっています。
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